第131話 あったかぁく
あらすじ シンは自分が狙われる理由を知った。
「あたしは応援呼んできます」
スミレはそう言って洞窟に出て行く。
「頼む」
ニドヘグがそれを見送り、氷のかまくら内部には三人だけになる。ストーブの前で丸くなっていたコモロは寝息を立てていた。
逃げるチャンスだと思う。
「……あの」
「喋るな。敵だぞ?」
ニドヘグは僕に巻き付いたまま逃がさない。
それはそうだろう。
僕も一緒に封印されると言うからには逃がす気などそもそもないのだ。むしろ神を産ませるために僕にママ活みたいなことをさせる未来だって想像できる。その意味で殺す気がないことは幸いではある。
「ひとつだけ」
食い下がって気になっていたことを問う。
「神の器ってもう産まれてますか?」
これまでに産まれた子供がそうなるのだとしたら、僕はその子を守ることも考えなきゃいけない。父親らしいことをしたいとかじゃなく、僕自身を守るためにもだ。
「いいや」
大蛇はちろちろと舌を出し、巻き付いている胴体の締め付けを強くする。それは意思を持ったロープのようなもので、人間が苦しむ場所を狙って圧迫してくる感じだ。
「もし産まれていれば、肝臓十字軍の動きは違うはずだ。肝臓だけが正確に器を探し出せる。かつての神と面識がある魔物ならば別だろうが」
「会ったことはないんですか」
「質問はひとつだけだ」
そう言ってニドヘグは僕ごと床に転がしてコモロの隣に寄り添うように身体を横たえた。休息が必要なのだろう。魔物や魔女の燃費がどうなってるのかは知らないが、受精卵じゃないとか言っても卵を産んで余裕というものでもないはずだ。
やっぱり逃げるチャンスだと思う。
「……」
挿入状態のちんちんはどうにかなる。忍魂を集めるのを止めて、射精しきってしまえば女になり、女になると少し細くなるので締め付けからも抜けようはあるはずだ。あとはタイミング。
いや。
やっぱ冷やされてる状態で射精は無理。
忍魂を抜こうとして全身が動かなくなるのを感じて僕は怖じ気づく。何気に根元から冷え切るのを防御していた。そりゃそうだ。生身で忍者やるには忍魂で自分を強化してる。なにもしてなかったら死んでるぐらいには冷たいのだ。
別の手段を考えねば。
「……」
なにも思いつかないまま時間だけが過ぎる。
僕の方は眠れもしない。
寒い。
本当に寒い。
ストーブの熱は感じるのだけど、ニドヘグと繋がってることでレンジの時間が足りなくて中心が冷たい冷凍食品のような有様だ。泥忍法じゃなくて氷忍法とか覚えれば良かった。寒さ耐性も得られるだろうからもっと。
泥と氷は相性最悪だと思う。
使うまでもなく、泥が凍るのが見えてる。
タカセさん。
無事なんだろうか。
肝臓十字軍には捕まってないみたいだった。フミコも知らないと言っていた。くのいちに騙されたのかも知れない。ならばどこにいるのだろう。僕と関わりのないところで逃げ切っていて、僕の居場所がわからず、すれ違っているならいい。
安全でいてくれるならそれで。
「ニドヘグぅ」
「んん」
「起きてぇ、おなかへったぁ」
「勝手に食べろ」
大蛇は眠たいらしく、いきなりちんちんを抜いて僕をコモロの前に差し出した。器用に尻尾側の長い胴体で足を縛って凍らせた。
「つめた……っ」
「寒いのぉ」
「はい。あの……これは本当に」
「じゃあ、これだぁ」
コモロは言ってポンと手を叩いた。マジカルな煙と光が弾けて瓶が握られている。魔法らしい魔法をやっと見れた感がある。感激している場合ではないが、ちょっと嬉しい。
「それは?」
「飲むとぉ、あったかぁく、なるよぉ」
きゅぽんと蓋を抜き。
「え、ちょ」
瓶が口に押し込まれた。
熱い。
喉が焼けるような……なんだ?
注がれる液体は、普通なら飲めそうもない勢いで入ってくるのに、むせることもなく、どんどん胃の中に落ちていくのがわかる。同時に全身が燃えるように熱い。
頭がくらくらする。
「じゃあ、コモロにぃ、ごはん頂戴?」
気がつくと魔女にキスされていた。
「へ?」
その長い舌が、熱い喉の中をかき回す未知の感覚に怯える間もなく、僕はまた犯されようとしている自分を見つける。いつもこうだ。
いつも。
「なんでもあげるよ」
なにを言ってるんだ?
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