隠してください！くのいちさん

第64話 こっちからする

あらすじ　エサ系男子カンダ・シン。

　頭の次は体。

「すべすべ……」

　不穏なことを呟きながら、ボディソープをつけた手で背中を擦るタカセさんの吐息は近い。首筋を嗅がれてる。ほとんど殺す気なのではと感じる。首をガブリといかれて、あとはじっくり。

「……ぷりっぷり」

　おしりに手は伸びていた。

　ぐりんぐりんと遠慮なく揉んでくる。洗ってるんだから不自然とまでは言えない。くのいちにやられることを考えれば大人しい。でも、食べやすい肉を品定めされてる感がある。

「気持ちいい？」

　耳の近くでささやいてくる。

　ほとんど身体は密着していた。熱さと弾力のあるスポンジで擦り、いつのまにかおしりにあった手が前に伸びていてちんちんを捕まえられていた。触るのが自然と言わんばかりだ。

「うん。でも、僕ばっかり」

　もう身動きは取れない。

「あたしは、クノ・イチとは違うから」

　それは急にヒヤヒヤする声で。

「へ？」

　僕はビクッとする。

「ニコが、嫌なら、したくない……おなか減ったよ。もう、我慢、したくない、嫌がられたら、あたし、そんなつもりで……お礼をしてくれるよね？　あたし、助けたんだから」

　ふわふわとヒヤヒヤの間で声は揺れた。

　迷っているようにも聞こえるけど、なにかに抵抗しているようにも聞こえる。僕が出してしまった魂の願いに引っ張られそうになってる。そうなんとなく解釈できそうだった。

　男に戻ろうとした僕のいやらしい願いを。

「おねえちゃん……」

　僕が悪いのかも知れない。

　ちんちんは硬い。

　ここで僕が男に戻れば、流石にタカセさんも冷静になるんじゃないだろうか。泡のついた指の動きは本当に洗うつもりらしく耐えられなくはない。集中しろ。なんとか男に戻れ。

　なんとか。

「お礼、あたしに、お礼してくれるよね？」

　ぎゅう。

「なにを、すればいいの？」

　我慢しながら集中するのは難しかった。

「そうだなー……そう」

　背中から抱きつきながら僕の肩に顔を乗せて半開きの口から涎を垂らしながら、タカセさんの目は落ち着かなかった。横目が瞬間的に合ったと思った直後には泳いでいる。

「キス、だめ。あたし、なに言って」

「……」

　それでいいなら。

「おねえちゃん」

　僕は呼びかけ、泡の滑りに任せてちんちんを掴む手を引っ張って、思わず射精しながらタカセさんの唇を奪った。こっちからするなら、葛藤しなくてもいいはずだ。

「んむ」

　視線が定まった。

「んんんっ！？」

　と思った瞬間に僕は逆にまた強く抱きしめられ、唇をこじ開けて入ってきた舌に舌を絡め取られ、じゅぶじゅぶと吸われた。また射精した。頭の中が真っ白になる。空気が足りない。気持ちいい。息が苦しい。気持ちいい。

「シン」

「？」

　名前を呼ばれて、いつ教えたかと思って。

「！」

　僕はちびった。

「どういうことだ、これは」

　くのいちだった。

　その体格には狭すぎる浴室のドアの向こう、狭い洗い場の床で絡み合う僕たちを見下ろす視線に恐怖しない訳がなかった。おしっこが止まらなかった。ちんちんが完全にしぼんでいた。

　抱き合っているタカセさんを汚してる。