第47話 おおっぱ!
あらすじ シズクは最初からそのつもりだった。
納得させられる訳などない。
「くそ……」
呻きながら崩れ落ちる少年を受け止め、床に寝かせながら、シズクは深い溜息を吐く。すべての人を救うことはできない。それが取り得る最善ならば、だれかに理不尽を飲ませることは、公務員の仕事だと自覚している。
「服を脱がせればいいですか?」
「はい……」
オオクス・トキコは頷いた。
「……はあはあ……」
シズクの隣にしゃがんで、息を荒げている。
「あの、よく我慢しましたね」
憂鬱な気分なので遠慮せずに言ってしまう。
クノ・イチほど暴力的ではないが、性的欲望に忠実で同意を求めない点では同じような被害を出している人物だ。三次研の研究者たちがすでに去った上野で一人残されているのも、一般的な意味で危険人物だからである。
超宇宙的超ヘンタイ超科学者だ。
「き、嫌われたくなかったの、です」
開いた口から涎が垂れていた。
「こんな可愛い子に嫌われたら、また死にたくなってしまう、でしょう? 死ねない自分には、どうしても本性を隠す必要があるの、です」
オオクスは吐露する。
「わかりますとは言えませんが」
シズクは仕事に徹する。
こうしてカンダ・シンの同意を得ず、女に変えられたとは言え、その身体を報酬として預けて情報を得ている。欲望のためではないとしても、褒められたことではない。日本政府に黙って協力してくれるような人物では本来なかったので、仕方がないというのも言い訳だ。
「自分はもとより、クノ・イチ氏さえ、我慢できないほど惹かれるこの子に『モノ』が隠されたことは、だれかの意図があるという証拠なの、です……へへ、はぁはぁ、ふぅふぅ……おおっぱ! なんて綺麗な……舐めても……?」
「時間がないんですが」
「忍魂ミキサーに十分な数の死体をかけるにはもう少し時間が必要なの、です……本当です。決して、濡らしたいとかではないの、です」
言いながら、その舌先はもう伸びている。
「質問には答えてもらいますよ」
少年の肉体を対価にする罪悪感は押し殺す。
知ることが必要だった。
それが多くの人を守ることに繋がるはずだ。
「ええ! ええ! 勿論です、とも!」
言いながらもうむしゃぶりついていた。
「……」
眠ったままの少年がビクっと震える。
「おいしい、おいしい……若い子はおいしい」
「……」
胸から少しずつ下半身に向かっていくオオクスの後頭部を見つめながらシズクは冷徹に努めようと決意する。少年に情を移してはいけない。異常に慣れてもいけない。心を閉ざし、仕事だけを遂行する。忍者たちと行動を共にするようになってから、それが彼女の生き方になっていた。
両脚が抱えられ、腰も上がる。
おぞましく醜悪な舞台は開演していた。
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