第27話 忍魂

あらすじ くのいち被害者の会はシンを歓迎。


 ジュースをゆっくりと飲み干している間に、影のウェイトレスたちが料理を運んできていた。綺麗に飾られた舟盛り、鶏の唐揚げ、サラダ、ごはん、味噌汁、諸々。次々と並べられる料理に、くーっと腹が鳴った。


「おぬしのための料理じゃ」


「ありがとうございます。あの、あなたは?」


 僕は白髪の女の子に尋ねる。


「イチから説明されてないのか?」


「なにも……」


「薄情な娘め。親に結婚相手を紹介しにきたんじゃないのかのう。つくづく教育に失敗した」


「親?」


 見つからなかったのでは。


「育ての親じゃ。忍法シンクロ!」


 女の子が両手の指先を合わせて叫ぶ、と目の前でその姿がぐにゃりと歪み、正座していた背丈がすっと伸びて、大人の女性が現れた。


「どうも、はじめましてカンダ・シンくん」


 忍者からスーツ姿へ。


「見たことある」


 失礼だと思ったがそう口が動いていた。


「ええ、それなりに知られていて欲しいわ」


「お疲れ様です。大臣」


 シズクさんはお酒を置いて頭を下げていた。


 大臣?


「待たせすぎよ」


「私たちの想定より追っ手が多く、完全に撒くのに時間がどうしても、蔵升島の場所を察知されては本末転倒ですから……」


「文部科学大臣?」


 僕は言った。


「クノ・ミドリ。聞いたことあるでしょう?」


「前の総理大臣と不倫疑惑の」


 記憶から引っ張り出された言葉はそれだった。


 ニュースで見たことがある。


「「ぶふっ」」


 双子が酒を吹き出した。


「そうね。十三歳の子のイメージはあれよね。でも、あれは、事実じゃありません。本当なのよ? なにが悲しくてあんな年寄りの相手をしなきゃいけないのか……ああいう疑惑ってどうやっても晴れないから困るわ」


 クノ大臣は額を押さえて言う。


 年寄り。


 政治家ってことで凄い年上のような気がしていたが、目の前で見ると母さんとそこまで歳が変わらないようにも見えなくはない。若く見えて、なんだかいやらしい感じの美人なのでそういう記事が書かれたんだろうという説得力はある。


「ごめんなさい」


 確かに失礼な発言ではあった。


「でも、あの、つまり大臣さんも、忍者?」


「イチのせいでね」


 畳で寝ているくのいちを見ながら言う。


「そのことを含めて、カンダくんにはまだ説明しなきゃいけないことがいっぱいある。とりあえず、さっきまで喋っていた、女の子……って年齢じゃないんだけど、あれは私の忍魂ソウル


「ソウル……?」


 魂?


「忍法は忍魂から発せられる力って考えてくれればいいわ。一種の霊的エネルギー。蔵升島はその霊的な力の集まる場所だったから、古くから忍者の里だった。ここまではいい?」


 真面目に言ってるみたいだった。


「……」


 文科大臣なのにとんでもなく非科学的だ。

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