電車に揺られて

マツリちゃんのオンボロチャリがぶっ壊れる前には何とか駅に着いた。

マツリちゃんはここまで頑張ってくれたチャリを乱暴に駐輪場に突っ込むと籠の中から白百合を取りだし、また僕の手を引っ張って駅の中に入る。

「痛い、痛いマツリちゃん力強い」

「急ぐぞ。次の電車に間に合わねーとまずい」

「ええ?」

「何十分も待ちたいか?」

「それはやだけど…」

マツリちゃんはさっさと券売機に向かうとお金を投入して切符を二枚購入した。

「あ、お金…」

「後で貰う。今は急ぐぞ」

マツリちゃんが買った切符の電車が来る時刻はもう数分もない。僕らは慌てて駅員さんに切符を見せると駅内に入った。

やってきた電車に乗り、席に座って一息つく。改めて切符を見ると見たこともない駅名だった。

「ここどこ?」

「あー、こないだ暇つぶしに行ってみたんだけど、すっごいいい場所があったんだ。金なくても行ける場所だぜ?今回の旅にピッタリだろ」

「これ、旅って言うのかな…」

「俺が旅と思えば旅」

相変わらず唯我独尊だ。惚れ惚れする。

ガタンゴトン。電車が揺れる。揺られた先に何があるのか僕はまだわからない。



「じゃ、登るか」

「は?」

まさか険しい山道を登らせられる羽目になるとは予想もしていなかった。

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