第4話試験

–––この人は何を言っている?ギルド?入隊試験?戦うのは好きだからいいけど。


「ギルドに入る予定なんてないけど。ファロン」


「着いてこい。」


ドアを開けるとすぐ酒の匂いが漂ってきた。臭い。昼間っから何をこんなに飲んでいるのだろう。ギルドと言っても特別なものはない。屈強な男たちがどんちゃん騒ぎをしているだけだ。その他には仕事の依頼などがある。


ファロンについて行くとあるところで止まった。受付嬢のところだ。


「本日はどうなさいましたか?」


笑顔の女性は美しいものだ。


「こいつをうちのチームに入隊させる。その為の試験を受けに来た。」


うちのチーム?分からない。イラが考えているうちに手続きは終了したようだ。つくづく自分勝手なやつだなファロンは、とイラは思った。


「こい。イラ」


「わかったよ。ファロン」


試験と言っても筆記では無い。ギルドで働いている人と少し手合わせしてその人が合格と認めれば試験合格。認めなければ落ちるということになる。


試験会場に着いた。イラの想像通りのものだ。真ん中にコート周りに客席がある。


「ここで戦うのか。」


「そうだ。頑張れよ!イラ。」


コートに立つ反対側から先程酒を飲んでいた1人が出てきた。足元がおぼ着いている。こんな相手で試験をできるのだろうか。


「それでは、イラさんの試験を始めます。」


鐘の音などなしだ。始まりの瞬間空気が変わった。


「お前、何級の魔法使いだ?ちなみに俺は2級の上位だ。」


「級ってなんだ?」


一体何を言っているのだろう。魔法使いはイラもだらからわかる。級とは何なのだろう。


イラが答えた瞬間。強烈なパンチが飛んできた。重いすごく重い。イラは思わず嘔吐してしまった。しかし不思議なことに昨日までの傷が治っている。


「っっっは!!!」


次から次とパンチが飛んできた。威力はだんだん上がって来ている。お腹を殴られ顔を殴られ足を蹴られボコボコにされている。


「ふー。受付嬢ちゃんこんなもんでいいかな?級も知らない雑魚は相手にならねーよ。」


痛い。痛い。痛い。痛い。痛い。痛い。痛い。


「だせーな。よくこんなんで、試験を受けようと思ったな。不合格だよ。不合格。」


イラの頭の中でひとつ記憶が蘇る。あれは、1番嫌な記憶だ。


「チカラガ、ホシイカ?」



イラの中でこの言葉が聞こえた途端。


「ラストぉぉお!」


顔面を殴られイラは失神してしまった。


「もう来るなよ。雑魚が。」


まただ。体全身が痛い。痛い。痛い。


「大丈夫かっっ?イラ?」


かすかに聞こえるファロンの声。心配しているようだ。


「聞こえるなら聞いておけ。今のは相手が悪い。あいつの実力は1級だ。素行の悪さからずっと2級にとどまっている。」


–––だからなんだよ。今まで負けたことがなかったのに。僕が一瞬で負けた。なんて情けないんだ。あぁ。力が欲しい!!!


「ナラバ、ワタシヲカイホウシロ。」


–––さっきからなんなんだよお前。うるせぇ。消えろ。


「ショウチシタ。」


–––あぁ。まぶたが重い。このまま俺、死ぬのかな?



意識が覚醒する瞬間は嫌いだ。脳が一気に疲れを感じるからだ。


「起きたか。お前特例で試験合格だってよ。生きていたら合格だったから良かったな!」


また横にファロンが座っている。イラはまたファロンの家に戻ってきたのだ。全身を怪我して。


「試験合格?あんな負け方をしたのにか?」


「まぁ。まぁ正確には合格は1人でひとつ仕事をしてからだけどな。」


仕事をするというのは、魔法使いが食っていくひとつの手段である。主に戦いに特化した魔法使いが仕事の報酬で生活をしている。


「今日は寝てろ。傷は俺が治しておくからな。」


ファロンが言うとイラは素直に眠りに着いた。


鳥のさえずりで目が覚めるというのは良いものだな、とイラは思い目を覚ました。傷が癒えている。ファロンには感謝してもしたりたいぐらいだ。


–––そういえば、仕事って何をするのだろう。やはり魔獣の討伐か?


ファロンが部屋に入ってくる。ファロンは笑顔で挨拶をした。


「おっはー。イラ」


「あぁ。おはようファロン。」


「お前なんか口調おかしくねーか?ところどころ俺に敬語使うし。てか、使わなくていいよー。」


「わかったよ。ファロン。今日はどこへ行くのか?」


少し悩んでファロンは、


「仕事かな?魔獣を倒しに行くよ〜。」


「そういや、昨日のあいつが言っていた級ってなんだ?ファロン」


「そうだな、強さかな?」


絶対適当に言ったであろうファロンの言葉をイラは鵜呑みにしてしまった。


「そうか。ファロンは何級なんだ?」


「俺は、昨日イラが戦った奴の50倍は強いかな?」


–––えぇーー!こいつ何言ってるんだ?あいつの50倍!?そんなに強いのか?


「ホッ本当か?とてもそうには見えないが。」


「まぁ、俺は 負けたこと無いからね。どんな相手にも。」


ファロンは少し暗そうに言った。何故だろう。強いのはいいことなのにと、イラは思った。


「それ、ほんとか?負けたことないって。」


少し考えた様な顔をして、


苦笑いしながら、


「あぁ、そうだよ。俺は世界が俺を殺してくれない。あぁぁ!時間がやばい!今日俺も仕事するんだった!!!」


慌てた様子でファロンは出かける準備を始めた。


「仕事って、俺もあるんだよね?どこへ行けばいい?」


「あぁ、そうだな、とりあえず北へ行ったら穴が空いているそこへ行け!俺はもう行くからな!」


ものすごい慌てようでファロンは家を出た。

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神様、今から殺しに行きます。 @ikke988

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