第3話 現実

夢を見た。災厄から逃れようとしている少年の夢。

少年を殺そうと迫ってくる憎悪の感情。

夢を見た。災厄に立ち向かおうとする少年の夢。1人では打ち消すことの出来ない強い憎悪を。

夢を見た。ただ、ひたすらに泣いている少女の夢。親を殺され、兄を殺され、1人泣いている少女を。


体がだるい。全身が痛い。激痛だ。徐々に意識が覚醒してきて痛みをもろに感じる。目を開ける。


–––どこだ?なぜ僕はベッドの上で横になっているんだ?さっきから体が重い。


「おっ、目覚めたか少年。」


と、イラに兄貴分の様な青年がイラに話しかけた。


–––どこなんだ、ここは。どうしてこんなに人がいるんだ?


「状況を理解出来ないようだな。しょうがないか、俺でも理解出来なと思うからな!少年!」


「状況は理解してますよ。僕は何故かベッドの上で横になっている、体も重いし。」


イラが言うと青年は驚いた様な顔をした。そのはずだこんな状況を理解できるなんて凄いからだ。


「理解が早くて助かるよ。俺はファロン。一応お前を助けた命の恩人になるのかな?」


「よろしく。ファロン僕はイラだ。ところでここはどこなんだ?」


周りを見渡すイラ。自分のベッドの他に小さな机。その上に本。窓がひとつと、キッチン、ドアだ。おそらくはファロンの家なのだろう。外を見るともう暗い。ファロンはイラが起きるまで待っていたようだ。


「ここは、まぁ俺の家だな。腹減ってるか?」


「少しはね。」


と言うとファロンはキッチンに行き、色々と料理し始めた。見た目とことななりファロンの手つきは慣れている人のものだ。とファロンの様子を15分ほど見ていると、何かを持ってきた。


おかゆだ。普通のおかゆだ。


「食えよ。食って早くその体を直せ。」


おかゆを口に運ぶ。少し苦い。おそらく薬草などをペーストにして入れているのだろう。だが体に染みる。5分もしないうちにイラはおかゆを食べ終わった。


「美味しかったか?」


「えぇ。美味しかったです。」


そうかそうかと言いながらファロンは、嬉しそうに台所へ戻った。


–––ここはどこなんだろう。どうして僕は全身に傷の様なものを負っているのだろう。そしてこのファロンと言うやつはなんなのだろうか。少し気を失っている間に何が怒ったのだろうか、もしかすると,


「あの!」


ファロンが振り返る。


「なんだ?そんな大きい声を出して。」


「僕はどうしてこんなに傷を負っているのでしょうか?」


「–––そうか。お前は気を失う前は何をしていた?」


–––どうしてこんな質問をするのだろう。気を失う前って。


「気を失う前は、森で暮らしてましたよ。1人で。でたしか、上から何かが落ちてきて気絶したんですよ。」


「そうか。それは災難だったな。」


–––やはりか、この少年イラは記憶がおかしくなっているだな。あの惨劇も覚えてないと言うことか。


「明日、少し外へ出る。着いてこい。」


「はぁ。わかりましたよ。」



翌日


「ここが、ギルドだ。お前には入隊試験を受けてもらう。」

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