#54 少女が示した道






 夏休みも後半に入り、相変わらずの3人で色々なイベントを楽しんだ。



 隣の市の花火大会に行った時は、クミちゃんとチョコちゃんはお揃いの浴衣を着てくれた。

 アジサイの描かれた浴衣で、クミちゃんはブルーを基調とした浴衣で、チョコちゃんはイエローを基調とした浴衣だった。


 僕も中学の頃に買ってもらった甚兵衛を引っ張り出して、3人和装で電車に乗って隣の市まで出かけた。




 花火大会以外でも、お買い物に出かけたり、お互いの家に遊びに行ったりお泊りしたり、毎日の様に3人で遊んだ。



 そういえば、僕の家に来る時は、お庭プールが最早定番となり、毎回3人でプール遊びをした。

 ただ、二人ともスク水はもう飽きたのか、ビキニしか着なくなったけどね。


 そんな3人仲良く遊ぶ姿を見た妹は、ジト目で「3人は三角関係のもつれで、修羅場だったんじゃないんですか?」と聞いてきたが、「修羅場になんてならないよ? 私達ラブだからね!」と言って、僕とチョコちゃんのほっぺにキスし、妹をドン引きさせていた。










 そんな夏休み後半を過ごし8月の終わりがもう直ぐそこまで来ている時期に、以前クミちゃんから予告されていた”3人でのこれからについての相談をしよう”と招集がかかった。



 集まった場所は、クミちゃんの部屋。

 もう何度も訪れている部屋に、3人になるように座って話し合いが行われた。



「え~っと、今日3人で相談したいのは、私達の3人の今後についてです!」


 黙って頷き、続きを促す。


「知っての通り、私はコータくんのことが好きです。コータくんの恋人になりたいです」

「そしてチョコちゃんもコータくんのことが好きです。コータくんの妹になりたかったんだよね?」


「はい・・・」


「私とチョコちゃんは、同じコータくんのことが好きで、ライバルのようなライバルじゃないような・・・そういう関係なの」

「お互いが意図しなくても邪魔しちゃったり脚を引っ張ったり、そんなことが起こりうる関係で」

「でも、その前に大事な友達でもあるの。仲良くしていたいの。 だから二人で相談して、私とチョコちゃんはコータくんとの恋路をお互い協力することにしました!」


「ドライな言い方をすれば、コータくんを二人でシェアすることにしたんです」


『なるほど・・・ようやく、チョコちゃんにクミちゃんが出した宿題の謎が解けたよ・・・』


「うん、そういうこと。 私ばかりコータくんとのことで良い思いしてたから、チョコちゃんにもちゃんと良い思いしてもらいたくて。でもチョコちゃん、兄×妹っていうシュチエーションに固執しててスキンシップはガンガン行くのに、キスとか恋愛的な行動は全然だったから、私が背中押したの」


 そう話してくれながら、クミちゃんはチョコちゃんの手を握った。

 そんな二人を見ていると、ただの友達とは別の確かな絆で結ばれているように、僕にも感じることができた。




『チョコちゃん、僕から1つ質問してもいい?』


「はい、どうぞ・・・」


『チョコちゃんとデートした時、食事しながら僕に話してくれたこと覚えてる?』


「はい、全部覚えてます。私がコータくんのこと大好きですって。ずっと傍に居てもいいですか?って聞きました」


『うん、その話。 その話は、友達としての話だったの? それとも恋愛としての話だったの?』


「その時は・・・友達としてのつもりでした・・・あくまでコータくんの妹になり切って、ずっとそんなことが出来る友達としての関係が続けられたら、と思ってました」

「でも、宿題のキスした後、気が付きました。 妹になり切ってコータくんの傍に居たいって思うのは、恋愛の好きという気持ちを、無意識に隠そうとして、誤魔化そうとしてるんだって」

「キスした日の夜、”本当は、私はコータくんのことが男性として好きなんだ”って、どうしようもないくらい自覚しました」


『そっか。 ありがとうね、話してくれて』

 そう言って、僕もチョコちゃんの手を握った。


「チョコちゃん、その後でね、直ぐに私に話してくれたの。「どうしよう。クミちゃんと約束したのに、妹になれそうにない」って」

「だから私も「最初から分かってたよ? チョコちゃんにとってのお兄ちゃんって、ラノベの世界じゃ恋愛対象になるもんね?」って。 コータくんにも話したよね」


『うん、僕も最初ソコが分かってなくて、色々と混乱してた』


「ということで、私とチョコちゃんのコータくんへの想いは解って貰えたかな?」


『うん、大丈夫だと思う』



「じゃぁ、次に進めるね。 私達的にはココからが本題なの」


『うん』


「コータくんへのお願いです。 私とチョコちゃん、にすることを考えて欲しいの」

「もちろん、この場で直ぐに答え出さなくていいから、時間かけても良いから、前向きに考えて欲しいの」


『うん・・・やっぱりそう来るよね・・・』


「ごめんね、コータくん。 非常識なお願いしてるのはクミちゃんも私も分かってるの。でも、この先も3人で仲良く過ごすにはこうするのが一番良いんじゃないかって思うの」


「最初は私が言い出したの。 私がチョコちゃんともコータくんとも仲良くしたくて、欲張りなこと考えて、それで二人を巻き込んだの」


『うん、大丈夫。二人の気持ちはよく分かってるつもりだよ。 僕だって二人と一緒に過ごしてきたからね』

『正直な気持ちは・・・ほぼ答えは決まってる。 でも、即答して良いことじゃないと思うから、少し考える時間が欲しいです』


「うん、さっきも言ったけど、時間かけて考えて答え出して欲しい」


『それに・・・クミちゃんへの答えも、未だにウジウジしててはっきり出来ていないし・・・』

『相変わらず、情けなくて頼りなくて、ごめん・・・』


「もう!謝ることないからね! それに、正式な恋人関係になってなくても、今もう既に恋人と変わらないくらいイチャイチャして楽しいしね」

「今日からは、チョコちゃんもグイグイアピールするんだよ?」


「うん、頑張る・・・」




 この日の話し合いは、こうして終わった。


 今日の二人の様子を見ていると、決して安易な考えでは無くて、二人で悩んで今日の結論に至ったんだろうと思えた。


 だから僕もキチンと責任を持って答えを出すべきだと、考えさせられた。





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