#52 妹(ニセ)はチョロい




 夏休みも半分が過ぎて、8月も半ば。

 今日はクミちゃんちの庭でバーベキューだ。


 それで、今日のバーベキューはいつもの3人だけじゃなくて、他のみんなも声を掛けた。


 マサカズにケンにサキちゃん、鈴木さんをはじめとしたぼっち先輩達、あとヒナタさんも声を掛けたそうだ。


 因みに、僕の妹にも声を掛けたけど、なんか勘違いされてて「修羅場に妹巻き込むな」と断られた。




 バーベキューは夕方からだったけど、僕とチョコちゃんは午前中からクミちゃんの家に行き、準備を手伝った。


 朝、近所のスーパーの開店時間にあわせて、クミちゃんママの運転する車で4人でスーパーに買い出しに行って、お肉とか野菜を買い込んだ。


 僕は荷物運び役に徹していたんだけど、買い物中ママさんが直ぐ僕にちょっかいかけようとするから、クミちゃんが「コータくんから離れて! ママは5メートル以内に近づくの禁止!」と怒っては「そんなに怒ってばかりだとコータくんに嫌われちゃうぞ☆」とママさんに揶揄からかわれるといういつもの光景が繰り広げられていた。


 チョコちゃんは、デートの時のことが尾を引いてるのかいつもより大人しくて、僕が話しかけてもオドオドしてて以前の友達になったばかりの頃みたいだった。

 そんなチョコちゃんを見て(今日一日、この調子なのは嫌だなぁ)と思い、親子喧嘩(?)を繰り広げるクミちゃんとママさんを放置して、僕の方からチョコちゃんと腕を組んで、買い物を続けた。


『野菜は・・・じゃがいも、ピーマン、キャベツに玉ねぎと・・・あと何だろ?』


「・・・サツマイモ・・・・」


『ああ、そうだね。サツマイモっと。 チョコちゃん、キノコ類平気?シイタケとか』


「苦手です・・・」


『じゃぁ、シイタケ多めにっと』


「えぇ、そんな・・・・」


『どうしたチョコちゃん! 返しがいつもより弱いよ! いつものチョコちゃんだったら「シイタケ嫌いだけどお兄ちゃんの毒マツタケなら大好き♡」とかドン引きレベルのボケぶっ込んで来るでしょ!?』


「ううう・・・」


『あんまり元気が無いようなら、今度は僕の方からキスすっぞ!』

 捨て身のボケをぶち込んでみた。


「ききききききき、キス!? あわわわわわ」

「こ、こんな衆人環視の中でキスを迫るお兄ちゃん・・・・そんな大胆俺様お兄ちゃんも大好き!」


 うん、簡単にスイッチ入ったね。

 流石チョコちゃん、チョロいね。 チョロチョコだね。



 復活したチョロチョコちゃんは、お肉コーナーに来ると目をキラキラさせながら次々とウインナーを手に取っては「お兄ちゃん、どれにする? こっちの大きいの? それともこっちの小さいの? チヨコ、お兄ちゃんより大きいのがいいな!」だの「じゃぁ、硬いのと柔らかいのはドッチがいいの? え?皮が厚いのがいいの!?ムケてるのじゃなくて?」 と、いつもよりも切れ味のあるセクハラで僕のハートえぐっていった。





 買い物を終えて帰りにファミレスに寄って軽めのランチして、クミちゃんちに戻ると1時過ぎだった。


 そこから4人で野菜とかの下準備をして、それが終わると少し休憩しようってことになって、クミちゃんの部屋で3人で昼寝した。


 最初雑魚寝してたけど、やっぱり二人とも寝ぼけて僕に抱き着いてきて、抱き枕てんごくにされながら『今日はバーベキューもういいから、このまま寝てたい』と本気で考えた。



 抱き枕にされたままウトウトと寝ていたら、マサカズがいつの間にか来ていて、起こされた。


「おいコータ、起きろ! お前らいつもそんな風に抱き合って寝てるのか!?」


『・・・ん? あぁ、マサカズ来たのか・・・・Zzz』


「こら寝るな!コータ!」


『んん・・・?』


「お前らいつも抱き合って寝てるのか?」


『うん・・・サイコーでしゅ・・・・Zzz って痛い痛い! 鼻つねらないで!』


「やっと起きたか」


『ああ、マサカズか、僕のエクストラボーナスタイムを邪魔する不届き者は』


「お前ら異常に仲良いとは思ってたけど、いつもそんな風に抱き合って寝てるのか?」


『寝る時はみんなバラバラだけど、二人とも寝ぼけると抱き着いてくるね。それより今何時?』


「もう3時過ぎてるぞ。ぼちぼちみんな来るんじゃね?」


『うお!ホントだ! クミちゃんチョコちゃん!起きろ! もう3時過ぎてるよ!』



 こうして慌てて起きて、4人でお庭の準備を再開した。


 バーベキュー用のコンロが二つあって、それぞれ炭に火を起こした。

 火の見張りを僕とマサカズが引き受けると、クミちゃんとチョコちゃんは汗かいたからと一旦シャワーを浴びに室内に戻った。


 マサカズと二人きりになると


「今日、水木も呼んだんだろ? もう大丈夫なのか?」


『まぁ、大丈夫でしょ。 クミちゃんが呼んだみたいだし、クミちゃんの言う通りにしてれば、大概なんとかなるよ』


「でも、あまり気を遣いすぎるなよ? 無理に話しかける必要ないし、今日は人が沢山いるから水木も一人ぼっちってことは無いだろうからな」


『うん、わかった』



 いつもお節介でちょっとばかりウザいマサカズだけど、こういう時のお節介は有難みを感じる。



 シャワーを浴び終えたクミちゃんとチョコちゃんは、中学ジャージ(それぞれ別の中学出身)に着替えていた。

(あ、そうだ、僕も事前にクミちゃんに「BBQで汚れるからジャージ持ってきて。中学の時のね!」って言われて持ってきてたんだ)と思い出して、僕も中学ジャージに着替えた。









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