閑話 伝道者は布教する




 ※鈴木視点





 修学旅行、二日目夕方

 場所は、女子の部屋



 むむむ


 折角、クミ氏に布教しようとお奨めBL小説コレクションを持ってきたのに、チヨコ氏達とコータ氏たちの部屋へ行ってしまったか・・・


 実は私も一緒に行きたかったが、あちらには陽キャ軍団揃い踏み。

 とても耐えられる気がしない。


 仕方ない、ここは大人しく新刊でも読んで一人の時間を楽しもうではないか。




「鈴木さん、何読んでるの?」


 おっと、私以外にも一人残っていることを忘れておった。

 私と同じように大人しく気配を消していたから気がつかなんだ。


「えー・・・・ラノベです・・・」


「どんなジャンルなの?」

 く、それ聞いちゃう?


 わかったぞ!こやつ、私の読んでる本をネタに、クラスで吊し上げるつもりだな!?


「あの・・・普通のです・・・」


「え?普通って?ラブコメとか?」


「な!? 私がそんな軟弱ラノベ、読むとお思いですか!?」


 しまったぁぁぁ!

 ラブコメと言われて思わずキレてしもた!?


「じゃぁじゃぁどんなの? 良かったら私にも1冊貸して欲しいの。すること無くって暇なんだよね」


 グギギギギギギ

 そんな純粋な目で、腐った私を見ないでくれぇ!


 えーい!どうにでもなれ!

 どうせクミ氏に貸そうと思ってたコレクンションだ


「あ、あの・・・だったらコレを・・・」


 私はバッグから数冊のBL小説を取り出し、彼女に渡した。


 あ、因みに持って来ているのは文庫本だけだ。

 薄い本を修学旅行に持ってくるほど、私はイカレてはいない。



 BL小説を受け取った彼女は、私と同じように壁にもたれて静かに読書を始めた。


 私も読書を再開するが、体中から嫌な汗が噴き出て文字に集中出来ぬ・・・

 いつ私に侮蔑ぶべつの眼差しを向けてくるのか、気が気でないのだ。


 もっとライトなのを持ってくるべきだった。

 クミ氏ならハードなのでも逝けるだろうと、バキバキドロドロなのを持ってきたからな・・・



「す、鈴木さん!」


「へ、へい!」

 緊張しすぎて、時代劇の町人みたいな返事してしもうた


「これ、凄いね! 面白いよ!」


「なななな、なんですと!? 水木氏も逝けるクチですと!?」



 そこからクミ氏たちが戻ってくるまでの2時間あまり、たっぷりBLの何たるかを熱く語り尽くした。


 最終的にコタ×マサでは、コータ氏が責めでマサカズ氏が受けで、更にケン氏がマサカズ氏を巡ってコータ氏に嫉妬の炎を燃やすという妄想話でお互い昇天エクスタシー




 次の日の朝食、ケン氏に冷たく当たるコータ氏をチラチラ気にしている水木氏を私は見逃さなかった。


 ふふふふ、布教せんのう完了!




  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る