#39 修学旅行1番の写真



 修学旅行最終日、朝起きると、隣に寝ていたケンに抱き着かれていて、とても不快な朝を迎えた。


 ケンを蹴とばして剥がしてなんとか起き上がって、顔を洗う為に洗面所へ行こうと思った瞬間、昨日のメガネらくがきのトラウマがよみがえって、ビビりながら鏡で確認したら特に何もされていなくて安心した。


 朝、朝食の為に食堂に行くと、この日はバイキング形式で、普段朝食はお米派の僕は、ちょっぴり気取ってパンとサラダを選んで食べたら、全然物足りなくて結局玄米のご飯と味噌汁も食べた。


 そいうえば朝食の時、ヒナタさんがチラチラとコチラに視線を向けるてくる気がして気になったので、昨日ヒナタさんと一緒に行動していたマサカズに何かあったのか食後にこっそり聞いてみたら「コータの昨日のメガネらくがきの顔の写メを俺が見せたからじゃね? 今日もメガネかけないのか気になるんだろ」とニヤニヤしながら言うので『だったらマサカズにもかけてやろーか!? お前にはサングラスバージョンだ!』と言いながら油性マジックを取り出すと、全力で逃げられた。 現役サッカー部レギュラーには脚で勝てん。




 この日は最後に、有名な遺跡に寄って社会科見学をした。

 遺跡見学では、みんな疲れてるのか大人しかったけど、鈴木さんだけはテンションが高くて、あちこちせわしなく動き回ってスマホで写真に収めてた。鈴木さんはレキジョでもあるらしいが、レキジョって戦国武将が好きなんじゃないの? 古墳も好きなの?



 遺跡見学の後は地元に帰るだけとなり、帰りのバスでは、クミちゃんはずっと僕にもたれて「すぴ~すぴ~」と爆睡していたので、僕も寝ることにした。


 その二人で寄り添って寝る姿を、サキちゃんが写メに撮ってくれてて、後で送ってくれた。

 僕もクミちゃんも寝顔がとても穏やかで幸せそうな顔をしてて、修学旅行1番のいい写真だなぁと思った。





 学校に夕方到着して解散すると、クミちゃんのデカいスーツケースを僕が抱えて、また3人で歩いて帰った。


 チョコちゃんをお家に送り届けて、クミちゃんと二人で歩きながら「もうすぐ夏休みだね。夏休みもいっぱい遊ぼうね」と言ってくれたので『クミお嬢様のご要望でしたら、どこへでもお供させて頂きます』と答えた。




 クミちゃんのお家の前に着いてスーツケースを降ろすと、ほっぺにまたキスされて首に両手を回してギュっとハグしてくれたので、僕もクミちゃんの腰に手を回して、体を密着させた。


 クミちゃんとのハグは、以前と違ってドキドキよりも胸が温かくなるような充足感を感じる。

 今は恋人じゃないけど、多分恋人同士だとこんな感じなんだろうな。


 体を離してクミちゃんの顔を見つめると、髪が乱れていたので手でサササって整えてあげた。


『おやすみなさい。ゆっくり休んでね』


「うん、コータくんもゆっくり休んでね。荷物運んでくれてありがとうね」


『じゃぁ、僕帰るね。 また明日、学校でね』


「またね。おやすみなさい」


 そう静かに挨拶を交わして、自分の家に向かって歩き出した。


 しばらくして振り返ると、クミちゃんがまだ見送ってくれてて、僕が振り向いたことに気が付いて「コータくーん!だいすきー!」と大声で言ってくれたので、僕も『ありがとー!』と返事をして大きく手を振って再び歩き出した。



 一人での帰り道、冷静になって(さっきのは「ありがとー!」じゃなくて「僕もすきだー!」って言えたらなぁ・・・)とか(ていうか、クミちゃん、自分んちの前でよくあんなこと出来たな。あとで絶対に恥ずかしくなるヤツだ。修学旅行マジック恐るべし)とか、そんなこと考えながら家に帰った。









  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る