#41 和解




 ※サキ視点



 修学旅行のあった週の金曜日、マサカズから「水木の話、聞いてやってほしい」と言われ、放課後にケンとマサカズに部活を休んで同席して貰い、ヒナタと会うことになった。



 約束した喫茶店に行くと、既にヒナタは来ていて、店の前で一人で待っていてくれていた。


 店内に入り、私の隣にケンが、ヒナタの隣にマサカズが座り、4人ともコーヒーを注文した。



 最初に口を開いたのはマサカズで

「修学旅行中に、水木からコータとのことを話して貰った。 話聞いてお節介だとは思ったけど、サキと水木は仲直りしたほうが良いと思って、俺から水木にサキへちゃんと話す様に薦めた。 部外者の俺が話すよりも本人の口からのが良いと思って、今日サキに声かけた」と説明してくれた。



 その後、ヒナタが話し始めた。

「サキちゃん、ずっとごめんなさい。 友達になってくれたのに、私はサキちゃんにもクミちゃんにも遠慮して、コータくんのことで悩んでたことや別れたことも話さなくて、二人にとても失礼なことしてたって反省してます」


 頭を下げながら話すヒナタは、前にコータと別れたことを問い詰めた時みたいにオドオドしておらず、以前の様に落ち着いているように見えた。


「謝罪はもう解ったから、話続けて」と続きを促すと、最初から全てを話してくれた。


 過去の杉山との関係。 

 男性が苦手になった原因。 

 周りの女子からイビられるようになったこと。 

 私やクミと友達になりコータと出会ってコータに想ったこと。 

 コータと付き合っていく中での苦悩。 

 杉山との再会とコータと別れようと決意したこと。

 コータと別れ、杉山にも逃げられたこと。 

 本当は、杉山のことが好きでは無く、体も許していないこと。

 クミに嫌われようとわざとウソ(好きな相手は杉山で体も許して、その後捨てられたと、コータと復縁を考えてること等)を話したこと。

 今は、コータに対しての謝罪の気持ちとクミの邪魔をしたくないこと。


 とても長い話で、色々と知らなかったことやショックな内容が多く、全て聞き終えるとどんな反応をすれば良いのかよく分からなくなった。




 4人の間に沈黙が続き、私から口を開いた。


「まずはヒナタ、前に一方的にキツイこと色々言って、ごめん。 あの時は私も感情的になって、酷い言い方してた」


「ううん。私の態度が悪かったし、サキちゃんが怒るのは当然だったよ」


「それで、今話してくれたことだけど、正直、どう反応していいのかよく分からないの。 ヒナタの立場になって考えると、色々と仕方が無かったんじゃないかって思えるし、でもコータや私自身の立場で言えば、相談して欲しかった、もっと他にやりようがあったんじゃないかって思えるし」

「でも・・・今思うのは、1度の失敗にとらわれすぎて、自分を必要以上に責めて周りと距離置くのは良くないんじゃないの? それこそ、失敗したと思ったらこうやって正直に話してくれれば、私達だってヒナタの為に何か出来るんじゃないかって考えることが出来るの。それをしなかったからドンドン悪い方へ行ってしまったように思えるの」


 コータが手を繋ごうとしたのを拒絶してしまった時

 杉山に再会して言い寄られた時

 コータに対して罪悪感で会うのが辛くなった時

 その時時ときどきに私やクミにでも相談してくれていたら、今と違う結果になっていたんじゃないかって残念でならない。


(あ、クミに相談したらダメだった。当時すでにコータに想い寄せてたあの子にはこんな相談、酷か)

(結局、どうやっても誰かが傷を負う結果だったのかもね・・・)



 私の言葉を聞いたヒナタは、とても驚いた表情をしたあと、ポロポロ涙を零しはじめた。


 すると、これまで黙って私達の話を聞いていたケンが

「水木さん、サキは水木さんのこと怒って突き放したけど、本当はずっと心配してて、クミちゃんに水木さんの傍に居て欲しいって頼んでたんだよ。 サキは短気で怒りっぽいけど、でも本当は思いやりのある良い奴なんだ」


 ケンの話の途中、「いらない事言わないで!」と止めようとしたけど、ケンは私を抑えて話し続けた。


 ケンの話を聞いたヒナタは、ついに嗚咽おえつを漏らして泣き出してしまい、私とケンを慌てさせた。


 するとマサカズがヒナタに「水木、サキに話してみて良かっただろ? これからは何か困ったことがあったら俺たちに遠慮せずに相談してくれ」と落ち着いた優しい声で語りかけ、ヒナタも泣きながら「うんうん」と頷いていた。



 ヒナタが泣き止み落ち着いてから、コータとクミにはどうするのか4人で話し合った。


 ヒナタは「コータくんには今更話してもただの言い訳になるから話せない。出来る事なら改めて謝罪だけでもしたいけど、コータくんは私と距離置きたいだろうし、クミちゃんとの仲を邪魔をしたくない」と言い、私も「今更コータの気持ちをかき乱すのは良くない」と同意した。


 クミに対しては、私と違って離れていた訳ではないので、「クミが落ち着いてからでもいいから、いつか本当のことを話してあげて欲しい」とお願いすると、ヒナタも「わかった」と了承してくれた。



 最後に「夏休みに入ったら1度、クミも誘って3人でランチにでも行こう」とヒナタと約束して、解散した。


 ケンと二人で帰りながら「水木さんってさ、大人しくて清楚で真面目で、なんかお堅いお嬢様ってイメージあったけど、実際は普通の女の子なんだな。今日の話や話し方見てて感じたけど、今の彼女の姿が本当の彼女なんだろうな。 多分だけど、コータもその辺り見抜けて無かったんじゃないかな」とケンが語ってくれて、何かストンと来た。コータだけじゃなく、私たちみんなヒナタに自分のイメージ押し付けてたんじゃないかって。




 だからヒナタは私たちに相談できなかったり、杉山みたいな奴に逃げようとしたんじゃないかと。












  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る