#35 元カノの真実
※マサカズ視点
自由行動になって、ケンやサキと別れて水木ヒナタと二人になった。
事前に水木がリサーチしていた雑貨屋やアンティークなんかのお店を周り水木の買い物に付き合った。
その後お昼時になり、同じく水木が事前に調べていたイタリアンレストランに入って、昼食をとる。
買い物や食事中、お互い落ち着いていたが、会話は他愛もないことしか言えず、中々聞きたいことが聞けずにいた。
イタリアンレストランを出ると特にすることが無くなってしまい、水木の希望でどこかカフェにでも入って集合時間まで休むことになった。
カフェに入りコーヒーを飲みながらしばらく無言が続いていたが、突然水木の方から話し始めてくれた。
「マサカズくん、今日はありがとうね」
「俺が言い出したことだから、気にするな」
「でも、退屈したでしょ? 私みたいなのと二人だけだと」
「そうでもないよ。たまには落ち着いて過ごすのもいいもんだよ」
「そっか・・・・」
「マサカズくん、本当は私に聞きたいことがあるんじゃないの?」
ハッとして、水木ヒナタの顔を見ると、こちらをじっと見つめていた。
「コータくんとのことかな? どうして振ったのかとか?」
「まぁそうだな。そのことはずっと聞きたいと思ってたな」
「やっぱりそっか。うん、マサカズくんにはちゃんと本当のこと話すよ」
それから水木ヒナタは静かにコーヒーを口にしながら話しを続けた。
「3年に杉山先輩っているでしょ? 凄く評判が悪い。私、彼と幼馴染なの。それに中学の頃付き合ってた」
いきなり杉山の名前出てきて混乱する俺を余所に、水木は止めることなく話しを続けた。
「彼、昔はもっと真面目で今見たいにチャラチャラしてなくて、私にも凄く優しくて、あの頃は本当に私も好きだった。でも、彼が高校に入学して、段々雰囲気とかも変わって来ちゃって、それでもまだ好きだったから何とか無理しながらも交際続けてたのね」
「それで私が中3の夏だったかな、彼に呼ばれて彼のお家に行ったのね。そしたらセックスさせろって迫られて、無理矢理やられそうになって、それが嫌で逃げたの。 多分、昔の優しい頃の彼だったら私も受け入れてたと思うけど、変わってしまった彼とはもうそういう気になれなくなってて、それでその無理矢理襲われそうになったのを最後に連絡とか絶って別れたの」
「多分、彼が女遊び酷くなったのって、私がセックス拒否したのが切欠だったんだと思う。私が拒否して逃げたから、開き直ってやけになってたんじゃないかな」
「でも、私の方もその事があってから男の人が怖くなって、学校とかでもいつもビクビクして過ごすようになった。話しかけられるとまともに顔を見て返事出来ないし、触られたりするのも凄く怖くて、ずっと距離置く様にしてたの」
「中学卒業して高校に入ってからもずっとそんな感じで。そのことを誰にも相談出来ないまま過ごしてて。更に男の子からの告白されることも度々あって、どうしてもそんな気持ちになれなくて全部断ってたら、周りから妬まれたり嫌がらせされたりするようになってた」
水木が男子と距離置いていた理由は、これだったんだな
「そんな時に、サキちゃんとクミちゃんが友達になってくれて、私が周りから嫌がらせとかされてるのを助けてくれた。 でもそれが全部コータくんが私を助けるためにしてくれてたって言うのをサキちゃんから聞いて、その時サキちゃんがコータくんのことを「コータは損得関係なく友達の為なら自分を犠牲にしてでも助けてくれる子だ」って教えてくれて」
「私はまだ男の人のことが怖かったけど、でもそのコータくんには兎に角お礼を言わないといけないって思って、サキちゃんたちに紹介してもらうようにお願いしたのね」
「それで実際にコータくんに会わせてもらってお礼を言ったら『僕は何もしてないよ。お礼ならサキちゃんたちに言ってね』って、更に『もう周りの子たちから嫌なことされてない?もし何かあったらサキちゃんたちに相談するんだよ?』って私のこと心配してくれてて、この人は下心とか無しで私のこと助けてくれたんだって解って、それで興味持つようになって少しづつ私の方から話しかける様になってた。 この人なら怖くない、男の人でもこの人ならちゃんと付き合っていけるかもって思って告白したの」
「今思えば、あの頃は”好き”っていう気持ちよりも、”安心感”っていう気持ちだったと思う」
「コータくんとのお付き合いは、会話は怖がらずに普通に出来てた。コータくんとお喋り沢山してたお蔭で、他の男性とも徐々にお話し出来る様になった。 でも体に触れられるのはどうしても怖くて、一度コータくんから手を繋ごうとしてくれたんだけど怖くて拒絶しちゃって、それからはコータくんに対して、罪悪感とか申し訳ない気持ちばかり思うようになってて、いずれコータくんもセックスを求めてくるんじゃないかとか考えると顔を合わせるのも辛くなってきて、二人きりで会うのも避ける様になってた」
「そんな時に、ウチの近くで杉山先輩と偶然鉢合わせて、最初怖くて逃げようとしたんだけど、彼にいきなり謝られて、それで少しで良いから話聞いて欲しいって言われて、その場で少しだけ話聞いたの」
「散々謝られて、それで今は女遊びもすっぱり止めてちゃんとしてるって言われて、それで油断しちゃったのか、パッて手を掴まれて「もう1度付き合って欲しい」って言われて、それだけだったら私も拒絶してたんだろうけど、手を掴まれても体が硬直したり震えることも無くて、男の人なのに杉山先輩に触られても怖くなくなってるって思い始めちゃって」
「その場は考えさせてほしいって逃げたんだけど、でも考えれば考えるほど「このままコータくんと付き合ってても、コータくんのことをドンドン傷つけちゃうんじゃないかって思えて、また手を繋ごうとしてくれても次も私は拒絶しちゃうんじゃないかって、そんなこと考え始めたら益々コータくんと会うのが辛くなってて、もう別れた方が良いって考える様になってた」
「それで、コータくんに私の方から別れてほしいってお願いしたの」
「好きな人が出来たっていうのは、別れる理由が必要だと思ってそう言った」
「でも、私から別れてほしいって言っててこんなこと思うのは良くないんだけど、コータくん、私が別れて欲しいって言うと、凄くあっさり「わかった。じゃぁ」って言って背を向けてそのまま帰っちゃって、結局コータくんもそんなに私のこと好きじゃなかったんだなって思ったら罪悪感とか薄れて、自分勝手に自分のこと可哀相って悲劇のヒロインみたいに思い込んでた」
「コータくんと別れた次の日、杉山先輩から連絡があって、前の返事もしてなかったの思い出して会うことにしたんだけど、コータくんと別れて自暴自棄みたいになってたし、杉山先輩に対して過去に拒絶した後ろめたさもあって「もう真面目に戻ってくれてるならいいかな」って思っちゃって、ヨリ戻すことOKしたんだけど、その話の流れでコータくんと付き合ってたけど別れたばかりなこと話したら、杉山先輩急に態度変わって「ヨリ戻すの、やっぱりナシ」って言い出して、訳が解らないからどういうことか問い質したら「コータを敵に回したくない。コータを怒らせるのは不味い」って言って「兎に角、お前がコータと別れたのは俺には関係ないからな!」って逃げちゃった」
「それからしばらくは何も考えたくなくて、色々なことから逃げてイジけて過ごしてたんだけど、修学旅行の班決めの時コータくんが私のこと気遣ってくれるの見て、それで漸く自分が馬鹿なことしてたって気が付いた。 コータくんは私の気持ちを尊重してくれてただけなんだ。それだけ私はコータくんに大切にされてたんだって」
「もうそこからは自分の愚かさに絶望して、これでみんなにも知られて責められるって怯えてた」
「それでその日の内にサキちゃんとクミちゃんに色々聞かれて、私なにも話せなくてサキちゃん怒らせて、サキちゃんに見捨てられた。でも、もう自分みたいなのが二人に仲良くしてもらう資格なんて無いと思って、クミちゃんにも嫌われようと色々嫌われるように話しして、でもクミちゃんは私のこと見捨てないで心配してくれた」
「コータくんに対して今はもう、ただただ申し訳ない気持ちでいっぱい。 今さら許して貰えるとは思わないけど、キチンと誠意を持って謝罪したいとは思ってる」
「でも、コータくんは多分もう私なんかと顔を合わせるのも口を聞くのも嫌だろうし、それにクミちゃんの気持ちも教えてもらって、自分がコータくんやクミちゃんにしてきたこと考えたら、絶対に邪魔しちゃいけないって決意した。だから私はもう卒業までじっと大人しく過ごすことにしたの」
「これで私の話は全部」
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