#34 少女の告白
修学旅行二日目は、午前中は水族館の見学。
90分各自好きに見て回っても良いって言われても、特に見たい物が無かったので、ぼっち軍団+1で大きい水槽の前に陣取って、泳いでる魚にみんなで名前付ける遊びで時間を潰した。
水族館の後はバスで移動してから班ごとの自由行動。修学旅行最大の山場だ。
事前に聞いてはいたけど、クミちゃんたちの班は、みんなバラバラに行動するらしく、クミちゃんは僕達の班に合流した。
最初に、観光名所として有名な神社に行って一回りしながらみんなで写メ沢山撮って、門前商店街にあるお蕎麦屋さんで昼食を食べたりお土産屋さんで家族へのお土産とか買ったりした。
その後は市バスで移動してから、事前にリサーチしてたスイーツのお店に行ってパンケーキを食べた。
まだ時間があったけど、ぼっち先輩たちはもう疲れたらしく「もうあんまり歩きたくない」って言って、じゃぁどっかで休みながら時間潰すかって話してたら、クミちゃんが「コータくん、行きたいとこあるから付き合って」って言い出して、みんなも「行っておいでよ」って言うから、そこから二人だけ別行動になった。
『行きたいところって遠いの?』
「ううん、ホントは行きたいとこは無いよ。 二人になりたかったの」
『そっか。じゃぁどこかブラブラする?』
「うんそうしよ♪」
ちょうど歩いて行けそうな距離にお城が見えたから『お城の周りなら散歩出来そうだし、あそこまで歩いてみよう』ってことで、手を繋いで散歩した。
「修学旅行、楽しいね♪」
『そう?僕は思い出の代わりにトラウマいっぱいだよ』
「え?なんで?」
『チミのせいだよ! 今後は”あーん”禁止! あと顔に落書きも!』
「えーどうしよっかなぁー?」
こ、こいつ、全く反省してねぇ
お城には15分程で到着して、そのままお堀の内側をぐるっと散歩を続けた。
クミちゃんはずっと上機嫌で、幸せそうな顔見てたら、なんか僕まで幸せな気分になった。
しばらく歩いたら途中にベンチがあったので「ちょっと休憩しようか」と座って休むことにした。
ベンチに座ると、突然告白が始まった。
「コータくん、もうバレバレで今更だけど、私、コータくんのことが好きなの」
『あー、うん・・・』
「男性としてだからね? 気が付いてたでしょ?」
『うーん、そうなのかな?そうだったらいいな?とは思ってたけど、もしかしたら勘違いかも?とも思ってたかな』
「そっか。 わたしとしてはかなりグイグイ押してたから、コータくんも絶対解ってるって思ってたのに。 なかなか難しいね」
『そうかもね。 僕は恋愛経験少ないから偉そうなこと言えないけど、やっぱり恋愛は難しいと思うよ』
「私ね、子供の頃からいつもチヤホヤされて、よく告白とかもされてた。でも誰とも付き合おうとは思わなかったし、男の人のこと好きになったことも無かったの」
「でも、高校入ってコータくんと友達になって、それで杉山に付き纏われてた時にコータくんに助けてもらって、その時に一発でコータくんのこと好きになっちゃった」
『僕は大したこと何もしてないよ』
「そんなことないよ。大したことあるよ」
クミちゃんは怒気を含んだ声でそう言って、真剣な顔で僕を見つめていた。
「サッカー部に迷惑かけないようにずっと続けてたサッカー辞めて、裏で色々動いて一人で上級生の教室乗り込んで話し付けてきて、でもそういうの全然教えてくれなくて、ただ「話したら解ってくれた」としか言ってくれなくて、そんなの格好良すぎるよ」
う~・・全部バレてたのか。
格好良いどころか、逆に恥ずかしいな。
「だから、私は、コータくんのことが大好き。 もう誰にも渡したくない」
僕の手を握ってるクミちゃんの手が震えていた。
クミちゃんの熱意が手から伝わってくる。
正直言って、好きだって言われて凄く嬉しい。
でも、自分がどうしたいのか、考えが全然まとまっていなかった。
それでも自分の話も聞いて欲しくなって、話し始めた。
『好きって言って貰えて、凄く嬉しい。 でも嬉しいのに戸惑う気持ちも正直言ってあるんだよね・・・』
『いきなりだったからなのか、頭の中で気持ちがまとまらないっていうか、それともビビってるだけなのか・・・』
『それにさ、この話は誰にもしたことが無いんだけど、僕、ヒナタさんに別れ話されたとき、自分でも不思議なくらいあっさりと引き下がって受け入れたんだよね』
『数分前まで大好きだって思ってたのに、別れてくれって言われた途端「はい、わかりました」って。好きだったのがウソみたいに別の物に見えちゃって、ヒナタさん置いてさっさと帰っちゃったの。 僕って本当は冷たい人間なんだろうね・・・』
『でも多分・・・・本当は怖いんだと思う・・・好きな人に捨てられるのが。 あの時だって、捨てられた現実が受け入れられなくて、ただ逃げ出しただけなのかも・・・』
『話せば考えがまとまると思ったけど、全然まとまらないや・・・』
答えるべき言葉が解ってるのに、それが素直に出てこなくて、まとまりのない話しばかりしてしまっている。
今度は僕の手が震えていた。
震える僕の手をクミちゃんは両手でギュっと掴んでくれていた。
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