#32 イチャイチャの向こう側



 僕、解ったよ。


 可愛い女の子とのイチャイチャタイムは楽しい。

 うん、楽しいはずなんだ。

 


「はいコータくん、これ美味しいよ?あーん」


 おっぱいぶよんぶよんしてるし、女の子の良い匂いするし(もぐもぐ)


「これはどう?あーん」


 でもね、物には限度というものがあってだね(もぐもぐ)、そろそろいい加減にして欲しい訳ですよ(もぐもぐ)


「甘いのばかりだから、次はこっちの煎餅せんべいとかどう?あーん」


 なのにさ、さっきから(もぐもぐ)少しは休ませて(もぐもぐ)くれよ!


『クミお嬢様、爺やは血糖値が心配ですので、そろそろお菓子は・・・』


「あ、お菓子ばかりだとのど渇いちゃうもんね。はい、お茶どーぞ♪」


『・・・・(もぐもぐ)』(そのお茶、クミちゃん口付けてたヤツやん)


「はい!お茶どーぞ!」


『・・・・(もぐもぐ)』


「お茶!どーぞ!」


『頂きます・・・・』


「ふふふふ、じゃぁ次はこっちのおかしはどう?あーん♪」


 うん、解ったよ。


 イチャイチャのその向こう側には、罰ゲームレベルの地獄が待っていたんだね。

 クミちゃん、君は天使のようなその笑顔で、僕をぶくぶく太らせて豚の様に飼いならすつもりなんだね。


 でも僕は負けないよ。

 こんなの失恋の苦しみに比べたらどーってことないさ。


 こ、こんなことくらいで・・・泣いてたら・・・ぐすん

 ぼ、僕は、負けないぞ・・・・シクシク

 つ、つらひ・・・


「こ、こ、こ、コータくん!?どうしたの!  クミちゃん!コータくんの目からボロボロ涙が零れてるよ!」


「え? エエエエ!?」



 コータは、静かに泣いていた。

 ヒナタに振られた時でさえ泣かなかったあのコータが、クミによるお菓子攻めで限界を突破してしまったのだ。


 この餌付えづけ事件を切欠にクラスメイトたちから、クミは”あのコータをも泣かしてしまう”と恐れられ、そしてコータはそのクミの下僕として認知されてしまうのであった。


(語り手:ケン)






『僕、もうコレ以上食べられないよママァン』げっぷ


「ご、ごめんね、コータくん。 ”あーん”してたら楽しくて、ついついやめられなくなっちゃった」テヘペロ


「も、もう我慢できましぇん! クミ姉さまにお兄ちゃんのこと任せることは出来ません! お兄ちゃんは私が守ります!」フンガフンガ


 え?今度はなに?

 チョコちゃん、急にどうしちゃったの?

 何のスイッチが入ってるの?今

 何度も言うけど、僕、君のお兄ちゃんじゃないからね?


 その後、目的地についてからの見学タイムでは、チョコちゃんがクミちゃんを威嚇し続けるという世にも珍しい展開が繰り広げられた。 いや、でもチョコちゃん怒っても全然怖く無くてむしろ可愛いから、僕もクミちゃんもただ微笑ましいだけだったんだよね。


 バスに戻ると「一度やってみたかったんです。お兄ちゃんの彼女とお兄ちゃんを取り合うラノベの定番」とチョコちゃんはケロっと言っていた。


『彼女じゃねーし、妹でもねーし』と冷静に突っ込むと、右隣りの人からフトモモつねられた。






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