相対の章

#30 出発の朝



 日曜日の夜、クミちゃんから連絡があって、修学旅行当日の月曜朝、チョコちゃんの家に集合してから3人で学校に行くことになった。


 僕がチョコちゃんの家に着くとすでにクミちゃんも来ていて、一度チョコちゃんの家に上がらせて貰い、ご家族に挨拶をした。


 でも、チョコちゃんずっと物陰に隠れてモジモジしてるから『チョコちゃん、体調でも悪いの? 拾い喰いとかしちゃダメだよ?』と心配すると、クミちゃんが「ちっがうから! ホラ、チョコちゃんもちゃんと見せてあげないと!」と言って、チョコちゃんを物陰から引っ張り出した。


 思わず『むお!?』と変な声出た。


『チョコちゃんがイメチェンしてるだと!? やっぱり拾い喰いでもしたか!?』


「うううう、もうダメ・・・今日休む・・・・」


「ばか! コータくんが変なこと言うからチョコちゃん自信なくしちゃったじゃない!」


『あいやー、びっくりしちゃって思わず。 でもチョコちゃん、めちゃくちゃ可愛いね! もっとよく見せて! メイクはクミちゃんから教わったの?』


「うん・・・クミちゃんが昨日教えてくれたの・・・・」


「どう? 凄いでしょ? チョコちゃん、絶対化けると思ってたんだよねぇ♪」


『メイクだけじゃなくて、髪型もいいね。 チョコちゃんおデコ出してた方が可愛いいね』


「そうでしょ♪」


 そんな風に、イメチェンしたチョコちゃんを二人でベタ褒めしながら学校へ向かった。


 僕の荷物は、おニューのリュックに詰めるだけ詰めて、後は土曜に買った有名専門店のお菓子を詰めたトートバックだけだったけど、何故かクミちゃんはデカいスーツケースにリュックと荷物が重そうだったから、トートバックとスーツケースを交換して、僕がスーツケースを抱えて学校まで歩いた。







 学校に着くと、既にバスが待機していて、生徒や先生は校庭にクラスごとに集合していた。

 僕たち3人がクラスに合流すると、チョコちゃんのイメチェンや3人のリュックがお揃いなせいか、クラスだけじゃなくて他のクラスの人たちからもチラチラ見られていた。



 点呼も終わり、教頭先生の挨拶が終わるとバスに乗車開始。

 乗り込む前に、チョコちゃんのイメチェン記念にチョコちゃん真ん中にして3人で「イェーイ♪」って言いながらスリーショットをスマホで撮影した。


 僕の座席は、真ん中辺りの右側で、右隣の窓側がクミちゃん、通路を挟んだ左側にチョコちゃん、その隣が鈴木さん。

 で、僕の前の座席にケンとサキちゃん、その左隣に佐田くんと近藤くんだった。 マサカズはもっと後ろの方の席で、寂しそうにコッチを見ていたのでサムズアップで『どんまい!』と口パクしたら、またため息ついてた。



 バスが発車すると、クミちゃんが「これ邪魔!」と言って、二人の間にある手すりをグイって上げて、僕に体をくっつけてきた。 そして僕の耳元に顔を寄せて「今日ね、コータくんに選んでもらったピンクの下着なんだよ♡」とささやいて、ふふふふとイヤらしい笑顔をした。


(僕の貞操が狙われてる!?)と身の危険を感じ、反対隣のチョコちゃんへ助けを求めようとすると、サキちゃんから「凄く可愛いね! 自分でしたの? クミに教えてもらったんだ! うん、すっごく良いと思うよ!」とマシンガントークで押されまくっててチョコちゃんもタジタジだった。





 みんな修学旅行が楽しみだったのか、朝からハイテンションだね。

 僕は朝からクミちゃんのデカいスーツケース運んできたから、クタクタだっていうのにさ。レバノンにカルロスでも運ばせるつもりかよ。


 そんなこと考えてたら、クミちゃんが僕の右腕に左腕を絡ませて、お菓子を食べ始めた。

 クミちゃんのおっぱいがぶよんぶよんと腕に当たって、荷物運びの疲れも吹き飛び、僕も一緒にお菓子を食べた。


 ふと前を見ると、サキちゃんとケンの二人が背もたれから顔だして僕たち二人をニヤニヤしながら見ててキモかったので『なにさ?二人ともニヤニヤしてて、キモいぞ?』と注意すると「いやー、なんか熱々オーラ感じるなって思ったら、後ろの座席でイチャコラしてるバカップルが居たからさ」とケンに揶揄からかわれて気が付いた。


 土曜日ずっと手を繋いでいたせいで、人前で手を繋いだり腕組んだりすることに抵抗なくなってた。

 そのせいでみんな居るのにバスの中でも普通に腕組んでたよ!


 慌ててクミちゃんの腕ほどこうとしたけど、バカみたいな怪力でガッチリホールドされて、クミちゃんに「はなさないし!」って睨まれた。


 僕、両手使ってほどこうとしてるのに、クミちゃん片手だけなんだよ?

 どんだけバカ力なんだよ! 全然外せそうにねーよ!



 それに、なんか左隣から

「コータきゅんとクミ姉さまがこんな場所でも欲情を抑えきれずに!?嗚呼、妹の私の前だというのに・・・まさか、私にNTRも目覚めさせようと!? クッ・・・私にはハードルが高すぎる!」って早口で喋るのが聞こえてきて、目を合わせるとこいつも危険と判断してしばらく左も向かない様にした。


 僕、カイリキーと変態に挟まれちゃってるね。





  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る