#28  少女と妹(ニセ)の密約

 ※クミ視点



 昨日はコータくんと二人で濃密な時間を過ごせた。


 今まで我慢していたうっぷんを晴らすかの様に、いちゃいちゃベタベタいちゃいちゃベタベタ・・・・

 じゅるり

 思い出したら、ヨダレ垂れてきちゃった。



 だけど、デートの最後、喫茶店でコータくんが語った”ヒナタちゃんと付き合ってた頃の話”は、聞いていてとても悲しくなった。

 コータくん、ヒナタちゃんと手を繋いだこともなければ腕を組んで歩いたこともないって。 あの様子だと、キスもしたことないと思う。

 中学生じゃあるまいし、それって本当に付き合ってたって言えるの?


 本当なら私の立場で言えば、喜ぶべき話かもしれない。

 コータくんのファーストキスを頂くチャンスだし。


 でも、喜べなかった。

 だって、コータくん、ヒナタちゃんと付き合ってた頃、あんなに尽くしてたのに、手すら握らせて貰えなかったんだよ?

 そんなの、可哀相すぎる。


 だから、改めて決心した。

 私が必ずコータくんの恋人になって、いっぱいいっぱい甘えさせてあげるんだ。





 そして今日は日曜日。


 ウチにチョコちゃんが遊びに来る約束をしている。

 二人で女子会をしようと私から誘って、約束を取り付けた。


 でも、ただ遊ぶ為だけに誘った訳じゃない。

 目的があってのことだ。 もちろんそれはコータくんに関して。



 今のところ、コータくんと私との関係はとても順調だ。

 周りに関しても、根回しは出来ている。


 唯一の不安要素が、チョコちゃんだと思う。


 チョコちゃんとは、お互いが同じコータくんへのアプローチをしつつも、私が恋人、チョコちゃんが妹、という差別化は出来ている。


 じゃぁ何が不安なのかというと、

 1つ目が、コータくんとチョコちゃんの距離感。お互い信頼しあっていることがハタから見ていてもよく解るほどの関係だ。 

 2つ目が、チョコちゃんが暴走したときの大胆さ。チョコちゃん、発情すると見境なくなるからね。 

 3つ目が、チョコちゃん自身が恋愛感情を自覚するんじゃないかっていう不安。今は兄x妹という関係への憧れに囚われているようだけど、これがいつか恋愛感情に変わるのじゃないかと心配している。


 だから今日、チョコちゃんと二人で今後の関係を改めてハッキリさせておきたいと考えている。 別に争ったり脅したりするつもりは全く無い。あくまで平和的に。 私だってチョコちゃんのこと、友達として大好きだしね。


 実は、更にもう1つ目的があるのだけど、それは実際にチョコちゃんが来てからにしておこう。





「チョコちゃん、今日は来てくれてありがとうね。 二人だけの女子会だからいっぱいお喋りしようね」


「は、はい! わたし女子会初めてなんで、凄く楽しみにしてきました! そ、それに・・・女の子のお友達のお家にお呼ばれするのも・・・初めてで・・・今日はありがとうございます」ペコリ


「そんなにかしこまらないでよ! それよりも、お願いしてたラノベ、持って来てくれた?」


「あ、はい! 選りすぐりの3冊を持ってきました!」


 なになに、タイトルは・・・

『妹の部屋のごみ箱から睡眠薬の処方箋が見つかった。ぼくの貞操が風前のともしび

『高校生にもなって妹と一緒にお風呂に入るのは可笑しいって本当ですか?』

『ウチの妹は、家では裸族』


 え・・・? 

 チョコちゃん、まさか・・・犯る気やるき満々?


「えーっと・・・コレってラノベなの? 官能小説の間違いじゃ?」


「いえいえー、どれもラノベの人気作ですよ♪ 特に1冊目の”妹睡”はシリーズ化もされてて凄く売れてて、この間コータくんにも貸したんですよ!」


「へー・・・。 じ、じゃぁ、有難く貸して貰うね・・・」


「はい! 読んだら是非感想聞かせて下さい!」


「う、うん・・・読んだらね・・・」


 チョコちゃん、こういう話になると、流暢りゅうちょうに喋りだすのよね・・・


「そ、そうそう、コータくん。コータくんのことで、今日は色々お話したかったの」

 ラノベのタイトルで心をくじかれそうになったので、無理矢理本題に入ることにした。



「前にも話したけど、私はコータくんの恋人になりたい。 そしてチョコちゃんはコータくんの妹(ニセ?)になりたい。 これは間違いないよね?」


「はい! クミちゃんが彼女さんで、私が妹です!」


「単刀直入に言うと、私とチョコちゃん、同じコータくんと恋人と妹になりたいって思ってる。 一見ライバルじゃないようだけど、下手したら脚の引っ張り合いみたいなことも起こりかねないと思うの」


「そ、そうですね・・・確かに、ラノベでは、恋人と妹が取り合うパターン、多いです・・・定番って言ってもいいくらいです」


「でしょ? でも、私はチョコちゃんとは争いたくないの」


「はい・・・私もクミちゃんとは仲良くしていたいです・・・」


「そこでね、私からの提案は、お互い協力しあいましょうってことなの」


「協力ですか?」


「うん。 言い方変えれば、コータくんをシェアしましょうってこと」


「シェア・・・」


「例えば、明日からの修学旅行で、自由時間は抜け駆けせずに3人一緒に行動するとか、学校や放課後とかお休みの日とかも都合がつく限りは3人、もしくは交替でコータくんと遊ぶとか」


「なるほどです・・・」


「それに、私たち、まだコータくんの恋人にも妹(ニセ)にもなれて無いし、そうなる為のアプローチをお互い協力しあうことも必要だと思うしね」


「判りました・・・クミちゃん、そのお話、乗りました!」


「おぉー! ありがとう、チョコちゃん! これからは運命共同体だよ、私たち!」


「はい! 一緒にがんばりましょう!」



 こうして、私とチョコちゃんは、コータくんを取り合うこと無く、協力していくことを約束した。


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