#22 少女は進む

※クミ視点




 コータくんのお家から帰ると、すぐに行動した。



 まず最初に、サキちゃんに電話した。


「サキちゃん、私、コータくんのことが好き。 サキちゃんに黙ってたけど、ずっと前から好きだったの」


「えええぇぇぇ!? そうだったの???」


「うん、杉山のことで揉めた時コータくんが助けてくれたでしょ? あの時からずっと好きだった」


「そっかぁ、そんな前からかぁ・・・気がつかなかったよ。 ごめん。多分今まで私、色々余計なことしちゃってたよね・・・・」


「ううん。誰にもわからない様に気持ち隠してたから、ヒナタちゃんのこととかも全部わたしの自業自得だし。でも、これからはキチンと自分の気持ちに正直になろうと思うの。だからサキちゃんにはちゃんと話しておこうと思って」


「うん、わかった。 話してくれてありがと。 応援するよ、クミ。 私に出来ることあったら遠慮なく言ってね」


「ありがと。でも、自分で頑張ってみるよ。 ヒナタちゃんにも話してみるし」


「そっか。 うん、クミなら大丈夫だと思うよ。頑張ってね」








 次の日、学校でヒナタちゃんと話すことに決めた。

 でもいざ教室に行くと凄く不安になってきた。ヒナタちゃんに対しては、嫌いじゃないし恨んでもいない。

 むしろ、私も自分の本音を隠し続けてきたから、ヒナタちゃんが私たちに言えなかった気持ちもなんとなく解ってた。


 だからヒナタちゃんに話す勇気が欲しくて、コータくんを教室から連れ出し強引に文句つけて、無理矢理コータくんの手を取って自分の胸に押し当てた。

 コータくん、いつもの調子で返してくれて、それで私の気持ちも固まった。


 お昼休憩にヒナタちゃんと二人っきりになって話をした。


「ヒナタちゃんに話しておきたいことがあるの」


「うん。どうしたの?」


「私ね、今までずっと隠してきたけど、ホントは私、コータくんの事がずっと前から好きだったの」


「え・・・」


「ヒナタちゃんがコータくんと付き合う前から、ずっと好きだった」


「そんな・・・」


「あ、でも勘違いしないでね。 ヒナタちゃんがコータくんと付き合ったのも、その後別れたのも文句言うつもりは全然ないからね。それは二人の問題だし、私がとやかく言う資格が無いの解ってるから」

「ただ、これからは違うから。 もしヒナタちゃんがコータくんとヨリ戻したいと思ってても、私は協力出来ないからね。それをちゃんと言っておきたくて」


「うん・・・・わかった。ちゃんと話してくれて、ありがとうね」


「判ってくれて、ありがとう。 でも、別にヒナタちゃんと友達辞めるとかそういうことじゃないからね」

 そう言って笑顔でウインクして見せた。


 私の言葉を聞いて、ヒナタちゃんは泣きそうな顔で無理に笑顔を作っていた。


 よし、キチンと話して判って貰うことが出来た。






 もう誰にも遠慮する必要が無くなった私は、その日からコータくんの傍に居続けた。


 コータくんと霧島さんたちのグループと一緒に居ると、私は仮面を被る必要が無くて、とても居心地が良かった。目的はコータくんの傍に居ることだったけど、グループの子たちと仲良くなれたのは嬉しい誤算だった。


 みんな自分に正直で、面白くて、そして私みないな陽キャと呼ばれる人間にも優しくて、私もこんな風になりたいって思った。




 コータくんとの仲を疑っていた霧島さんとも、一度コータくんのことで話をした。


「霧島さん、ストレートに聞くけど、コータくんのことどう思ってる? 恋愛対象として好き?」


「えと、その・・・コータくんは凄い人で・・・コータくんのお蔭で私もみんなも今学校が楽しくなってて・・・話すの苦手だった私もコータくんのお蔭でお話し出来る様になって・・・うん、コータくんは尊敬する大切な友達です」

「わたしはこんなだから、男の人との恋愛とか考えたことなくて、もしコータくんをそういう風に見るなら・・・・コータくんは理想のおにいちゃんです!」


「えーっと・・・どゆこと?」


「私、一人っ子だからずっとお兄ちゃんっていう存在に憧れがあったんです。 でもお兄ちゃん欲しくても無理じゃないですか。 だからコータくんには私のお兄ちゃんになって欲しいです!」


「う~ん、よく解らないけど、恋人になって欲しいわけじゃないんだよね?」


「はい、お兄ちゃんです!」


「そっか、なら安心。 私も正直に言うね。 私はコータくんのことがずっと好きなの。 私はコータくんの恋人になりたい。 だから、えーっと霧島さんとはライバルにはならないのかな? 大丈夫だよね・・・?」


「そうですね。私が妹で、クミちゃんは彼女さんですね」


「ふふふ、よかったぁ。 ねぇねぇ、私も霧島さんのこと、チョコちゃんって呼んでもいい?」


「はい!大丈夫です!」


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