#20 少女の決心

 ※クミ視点



 コータくんの家の前で待つ間(焦ってココまで来ちゃったけど、何話せばいいんだろ・・・)と不安が押し寄せてきた。


 霧島さんとの関係もまだよく判らないし、何せヒナタちゃんと別れてから、まだそれほど経っていない。

 もしココで私が告白しても、断られるイメージしかかない。


 しかし、考えがまとまらない内にコータくんが帰って来た。


 コータくんのお家にあげて貰い部屋に案内されると(どーしよ、どーしよ)と焦ってしまい、思わず後ろから抱き着いた。


 でもコータくんの温もりを感じたら一気に安心感に包まれた。



『どどどど、どしたの!?』


「少しだけじっとしてて」


『う、うん・・・・。     もういい?』


「早いよ! ばか!」


『えーだっておっぱいが』


(あぁ、この感じ、この返し方、コータくんらしいや)

 ほんの少しの間、話せなかっただけなのに、懐かしい気持ちになった。

 その懐かしさに、気持ちが落ち着いてきた。


「・・・・・・・・・最近コータくん、私と喋ってくれなかったから、寂しかったんだよ?」


『うん、ごめん・・・ヒナタさんと別れてから精神的に参ってたから・・・』


「うん、わかってる・・・わかってても寂しいもんは寂しいの」


 落ち着いてきたからか、少し本音を零してしまった。


 そこからは、本当の気持ちは何とか隠しつつも、いっぱい愚痴を聞いてもらった。

 コータくんは私が手を繋いでも嫌がらずに、静かに聞いてくれた。


「コータくん・・・私たくさん頑張ったよ? 愚痴零してもバチ当たらないよね?」


『うん、クミちゃんは誰よりも頑張ってるよ』

 そう言って、コータくんは優しく微笑んで私の頭を撫でてくれた。


 あぁ、やっぱりこの人のことが大好きだ。


 コータくんともっと一緒に居たい。

 コータくんにもっと触れていたい。

 コータくんの前では仮面は被りたくない。

 コータくんに私のことをもっと見て欲しい


 次から次へと恋する衝動が湧きあがってきた。


 湧き上がる衝動を抑えつつ(でも膝枕をおねだりしちゃった)、今日一番聞きたかったことを聞いた。

 霧島さんとはただの友達だと言う。

 ヒナタちゃんのことも、もう吹っ切れて気持ちは残っていないと言う。

 だからと言って、今のコータくんは、積極的に恋人を作る気は無さそうだ。


 まだ不安だ。

 このまま告白しても、きっと断られる。

 今はまだどうすれば良いのか、解らない。

 


 この日の最後、コータくんが私の家まで送ってくれて、最後にまた抱き着いた。

 それで心が決まった。


 もう私は遠慮しない。

 人の顔色気にして自分の気持ちを隠して、それでコータくんを他人に取られるくらいだったら、周りに嫌われてでもコータくんの傍に居続ける。

 そしていつか自分の気持ちを告白して、恋人になるんだ。




  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る