恋心の章

#13 少女は頑張ってる



 ある日、チョコちゃんを送ってウチに帰ってくると、ウチの前にクミちゃんが立っていた。


 クミちゃんとは、ヒナタさんにフラれて以来ほとんど会話をしていなかった。

 ぼっち先輩たちとの交流を経て、殻に閉じこもるのを止めてはいたけど、クミちゃんがヒナタさんとよく一緒に居るのを見かけていたので、どうしても距離を取ったままになっていた。


 ウチの前に立つクミちゃんを見た時も(ヒナタさん絡みの話でもあるんだろうな・・・困ったなぁ)とまず最初に考えた。


 とは言え、折角ウチまで来てくれた友達を無碍むげに追い返すのは良くないので、平常心を心掛けて声を掛けた。



『クミちゃん、どうしたの?ウチの前で。 僕に用事でもあったの?』


「コータくん待ってたの。 メール送ってたんだけど、見てないのかな?」


『え!?』


 慌ててスマホ取り出して確認すると

「今日、コータくんのウチに行ってもいい? 久しぶりにお喋りしたいの」と短い文面のメールが来ていた。


『ご、ごめん。全然見てなかった。 気が付いてたらもう少し早めに帰ってたのに、ごめんね』


「大丈夫だよ。まだそんなに遅くないし」


『とりあえずウチに上がってよ』


「うん、ありがと」


 家に上がってもらい、クミちゃんを2階の自分の部屋に案内した。


 部屋に入り荷物を置いてから『飲み物持ってくるから好きなところに座ってて』と言い、部屋から出ようとすると、後ろから抱きしめられた。


 背中にクミちゃんの大きいおっぱいが当たってる・・・・



『どどどど、どしたの!?』


「少しだけじっとしてて」


『う、うん・・・・。     もういい?』


「早いよ! ばか!」


『えーだっておっぱいが』


「・・・・・・・・・最近コータくん、私と喋ってくれなかったから、寂しかったんだよ?」


(おっぱいはスルー・・・)

『うん、ごめん・・・ヒナタさんと別れてから精神的に参ってたから・・・』


「うん、わかってる・・・わかってても寂しいもんは寂しいの」


(うううう、耳元で色っぽい声でこんなこと囁かれると、勘違いしそうだ・・・・)

『あの~、クミちゃん? とりあえず離れよ?』


「・・・・わかった」


 そう言って、離れてくれたクミちゃんの方へ向きなおすと、クミちゃんは潤んだ目で僕を見つめ返した。


『あー、えー、そのー、なんかあった?』


「・・・コータくん、私の愚痴、聞いてくれる?」


『うん、聞くよ。聞くからいったん座ろ?』

 そう言ってから、クミちゃんの背中にそっと手を添えてベッド行って、並んで座った。


 クミちゃんは、僕の手を握りながらポツポツと話し始めた。


 ヒナタさんと僕が別れてたことを話して貰えなかったことにモヤモヤしてること。

 サキちゃんがヒナタさんに怒って仲違いしてしまったこと。

 ヒナタさんが一人になってしまうのが心配で、クミちゃんがずっと傍に付いてること。

 ヒナタさんが前よりも元気が無くて、でも自業自得なことだから、どうにもしてあげられないこと。

 そんな風に過ごしてたら、僕やマサカズやケンとも距離が出来ちゃったこと。

 そのせいで修学旅行が憂鬱になってること。

 こういうこと全部ひっくるめて誰にも話せなくて、ストレスが溜まってること。


「そう思ったら、誰かに話聞いて貰いたくなって、コータくんに会いに来たの」


『そっか、僕とヒナタさんのことで、いっぱい迷惑かけちゃってるんだね。 ごめんね』


「コータくん・・・私たくさん頑張ったよ? 愚痴零してもバチ当たらないよね?」


『うん、クミちゃんは誰よりも頑張ってるよ』

 僕はそう答えて、空いてる方の手でクミちゃんの頭をナデナデしてあげた。


 するとクミちゃんは「甘えついでにもう1つお願い。膝枕して!」と言い出した。


 今日のクミちゃんグイグイくるな、と思いつつも『いいよ』と答えて、そのままベッドの上で膝枕をして頭を撫で続けた。


 クミちゃんは僕のヒザの上に頭をのせて、見上げる様に僕の顔をガン見している。


「そういえばコータくん、最近霧島さんと仲良いよね? 付き合ってるの?」


『霧島さんだけじゃなくて、佐田くんとか近藤くんと、あと鈴木さんとも仲良くして貰ってるよ。修学旅行の班が一緒だからね』


「でも、霧島さんと一緒に帰ってるでしょ?」


『ああ、帰る方向が一緒だからってだけだよ。別に付き合ってはいないね』


「そっか。 じゃぁさ、ヒナタちゃんのことはどう? まだ好き?」


『う~ん・・・誰にも言わないって約束してくれる?』


「うん、約束する」


『正直言うと、もう好きではないね。 フラれてすぐの頃は未練あったと思うけど、未練がある自分が嫌で必死に考えない様にもがいてた。 でも最近は、自然にヒナタさんのことは何も感じなくなったね。 霧島さんたちと仲良くするようになったら、ヒナタさんのことはどうでもよくなっちゃった』


「そっか・・・じゃぁ、コータくんは無事に失恋から立ち直ったってことなのかな?」


『そうだね。もう落ち込むことは全然なくなったね』


「コータくんはやっぱり強いね」


『ううん、僕は弱いよ。メンタル豆腐だから。 元気になれたのは、霧島さんたちのお蔭だからね』


 そこから、ぼっち先輩たちの面白エピソード(特に鈴木さんの)を沢山話した。

 クミちゃんはクスクス笑いながら聞いてくれて、ウチに来た時よりも元気になってくれた。


 夜も遅くなったので、クミちゃんの家まで送っていき、クミちゃんの家に着くと

「最後のもう1回」と言って正面からハグされた。


 ハグされたまま僕がクミちゃんの頭をナデナデしてあげると

「今日はありがとね。おやすみ」と言って僕から離れて、家に入っていった。



 クミちゃんの家からの帰り道、僕はクミちゃんのおっぱいの感触で頭がいっぱいだった。




  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る