#11 傷を癒してくれたぼっち先輩たち



 ぼっち先輩たちと修学旅行の班を組んで以来、放課後色々理由をつけては集まるようになった。

 毎回全員が集まれる訳では無いけど、僕が音頭おんど取ってみんなに声を掛けてる。


『もうコレ、ぼっちじゃないよね?』と一度言ってみたが


 鈴木さんに「ぼっち舐めるな! これは情報交換と交流の場であって、我々は教室に戻れば立派なぼっちなんだぞ!」と怒られた。


 相変わらず鈴木さんは、安定の情緒不安定。

 鈴木さんは、ぼっち界隈では幹部クラスだ。

 まぁ、そんなこと言いながら、毎回集まりに参加してくれる鈴木さんは、実はこの集まりを楽しみにしてるのバレバレなんだけどね。

 でも「コータ氏は受けでも責めでもどっちでも逝ける有能な素材」とか、本人に向かって言うのは止めてほしい。

 鈴木さんの脳内で、僕がどんだけ凌辱りょうじょくされてるんだか、僕は心配だよ。




 集まった時の話す話題は、BLだけじゃなくて、修学旅行の行動計画や、アニメやゲームや小説なんかの趣味の話題、あと試験の話とか。 恋愛の話は全く出ないね。


 みんな何かしらの趣味に没頭しているからか、話題は尽きない。

 時には共感しあって、時には意見をぶつけ合う。

 普段、孤高のぼっちを気取ってるけど、実は会話に飢えてたんだね。


 僕は趣味らしい趣味を持っていないから、そんな彼らのコアな話は、聞いていてとても楽しい。


 うん、殻に閉じこもってるよりも、仲間と交流してるのはやっぱり楽しいや。




 因みに、班内でスマホの連絡先は交換しているけど、今のところほぼ使用されていない。


 みんな、友達とチャットしたりメールしたりしたことが無いらしく、どのタイミングで送ればいいかとか、何書いていいかとかが解らないらしい。

 僕はそんなこと考えたことも無かったから、『流石、ぼっち先輩たち。半端ねぇ。 僕、いつも軽い気持ちでメッセージ書いてた』と称賛すると、幹部クラスの鈴木さんから「裏切り者! てめぇの血は何色だぁ!」ってキレられた。


 鈴木さん、超メンドクサイ性格してるけど、やっぱ面白い。

 そんな鈴木さんを見て、佐田くんと近藤くんは二人揃ってメガネをクィって上げて「その通りだぞコータくん」とか言って納得してるし、チョコちゃんは鈴木さんが本気で怒ってると勘違いしてオロオロしてる。


 結局その後、チョコちゃんの「メール送っても迷惑にならない? よかったらコータくん、メールの書き方教えて?」発言を切欠に、みんなに僕のスマホのメール履歴を見せながらレクチャーすることになった。 鈴木さんが一番喰いついていたことをココに報告しておこう。


 うん、みんなも楽しそうで何よりだ。

 早速お互いにメール送りあったりしてるし。

 目の前に居るんだから帰ってからにしろよ!

 やっぱコイツ等、もうぼっちじゃねーだろ! どんだけ仲良しなんだよ!って思うけど、言うとまた鈴木さんのお説教が始まるからもう言わない。





 チョコちゃんとは、あの日以来毎日一緒にお昼ご飯食べて、毎日一緒に帰ってる。


 お昼ご飯はたまにマサカズやケンやサキちゃんも一緒になるけど、人見知りのチョコちゃんはぼっち軍団と居る時よりも緊張しながらも、頑張って僕たちの下らないお喋りに付き合ってくれてるようだ。


 チョコちゃん、喋るのは苦手でいつもたどたどしく話すんだけど、逆に聞き上手なんだよね。僕が話していると、ウンウン頷きながら一生懸命聞いてくれてるの。

 だから僕も嬉しくなっちゃって、ついついいっぱい喋ってしまう。


 そういえば、チョコちゃんが貸してくれた本は全部ラノベで、タイトルが

「ウチの妹が毎朝ボディプレスで起こしてくる」

「ウチの妹は4番でサード」

「妹の部屋のごみ箱から睡眠薬の処方箋が見つかった。ぼくの貞操が風前のともしび

「商店街のくじ引きで1等当てたら賞品が妹だった」


 うん、どうやらチョコちゃんも相当こじらせているようだ。


 まさか、実際に妹とかお兄さんが居て、禁断の愛に目覚めちゃったの!?と思って聞いたら、一人っ子だってさ。

 一人っ子だから昔から兄弟(特に兄)っていう存在に憧れがあって、憧れのお兄ちゃんに可愛がって貰う妹っていうシュチエーションがツボなんだって、めちゃくちゃ興奮しながら早口で力説してくれた。


 『ウチ妹居るけど全然可愛くないよ?』って教えたら、「ダメだよ!妹ちゃんは大切に愛でてあげないと!」ってお説教された。



 楽しい日々というのはあっという間に過ぎていくのか、気が付くと失恋から2カ月経ってて、あれだけ気になっていた元カノのヒナタさんのことが、気が付くと全く気にしなくなっていた。

 そうなれたのは、チョコちゃんを始めとするぼっち先輩たちのお陰で、彼らには尊敬と感謝の気持ちで一杯だ。

 恥ずかしいから、そんなこと面と向かって言えないけどね。






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