#08 仲違い
※サキ視点
突然のコータの発言。
最近様子がおかしかった理由が何となく解った。
でも「まさか!?ウソでしょ!?」と言うのが本音。
マサカズの話を聞いても、まだ信じられない気持ちが強かった。
コータの方がヒナタに嫌われる様なことをした可能性もあるけど、やっぱりコータに限ってそれはあり得ないだろう。
さっきのやり取りでコータとヒナタの態度を比べてみても、ヒナタの方に問題があるように感じる。
コータは見た目こそ普通だけど、性格は真面目で穏やかで優しいし、何より気遣いが出来るとても良い人だ。
そのコータの献身的な愛情を一身に受けていたのがヒナタだった。
それをヒナタの方から捨てて、別の男を選ぶ?
いや、マジでありえないんだけど。
だって、ヒナタはコータのその優しさを知って好きになったんでしょ?
なのになんで今更それを捨てるの?
普段の二人は、”ピュア”でそれはもう微笑ましい物だった。
控えめで目立つことを好まないヒナタに合わせて、コータは人前では決していちゃつくようなことはしなかった。
でも私は知ってる。
教室では密かに二人でアイコンタクトで会話して、二人ほほを赤らめているのを何度も見ている。
そんな二人を見ては毎回甘酸っぱい気持ちになって、でも羨ましくてしょうがなかった。
私にとって二人の恋は、憧れそのものだったんだよ。
だから私は猛烈に腹が立った。
友達だって思ってたのに何も話して貰えなかったことも、私の憧れた恋を本人がブチ壊したことにも。
本当は、その場でそのまま問い詰めたかったけど、ケンやマサカズに
だから放課後、クミを含めた3人で喫茶店に行って話を聞くことにした。
但し、私が怒って興奮気味なのを察して、クミが代表して話すことになった。
「ヒナタちゃん、まず確認なんだけど、コータくんと別れたっていうのは本当の話?」
「うん・・・」
「理由は聞いてもいい?」
「・・・・・」
「言いたくない?」
「そんなこと無いけど・・・言うと、二人に嫌われちゃうから・・・」
「分かった。 じゃぁ、聞き方変える。 別れたこと、何で私達には黙ってたの?」
「それは・・・二人ともコータくんと仲良いから、言いづらかった」
イライラがどんどん酷くなってきていたが、クミに目線で「押さえろ」と制止され、なんとか我慢していた。
ヒナタ、本当にどうしちゃったの?
もっと穏やかで落ち着いてて、堂々としてたじゃない。
こんなに人の顔色伺ってビクビクしたりする姿なんて初めて見たよ。
そんなヒナタ見てたら、益々フラストレーションが溜まってきた。
やっぱり我慢出来ずに今度は、私から話をした。
クミは心配した顔をしてたけど、気にせず話し始めた。
「コータの親友としては正直言って凄く不満だけど。でも、別れ話に他人の私達がとやかく言うことじゃないと思ってる。だからコータと別れたことは仕方ない」
「マサカズの話だと他に好きな人が出来たって言ってたけど、ソレもこの際もういいよ」
「私はヒナタのこと友達だと思ってたんだけどさ、ヒナタはそうは思ってなかったの? 嫌われるから理由言えない?」
「なにそれ。 別れたこと内緒にしてたことも、そうなる前に相談すらして貰えなかったことも、すっごく悔しいよ。 今この場でぶん殴ってやりたいよ」
「でも殴らない。 だってコータのが私達よりもっと悔しい思いしてるんだもん」
話していたら悔しくて涙がポロポロ零れてきた。
お店のおしぼりで無理矢理顔をゴシゴシ拭いてから、クミに向き直して
「クミ、ごめん。 ヒナタのこと任せる。 私はやっぱダメだ。 せめて理由とか事情が聞ければヒナタのことも考えれたけど、今はやっぱヒナタのこと許せそうにない。 面倒ごと押し付けて悪いけど、私は今まで散々コータに助けられてきたから、コータのが大事」
そう言って、財布から千円札を1枚取り出してテーブルに置き、ヒナタと目線を合わせることなく席を立って店を出た。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます