#07 本音と脱却




 親友の二人にさえ話せない僕の本音を語ろう。




 元カノのこと、気にしてないように振舞ってるけど、実際は滅茶苦茶気になる。

 気配を感じるとついついそちらを見ようとしてしまう為、意識して視線を背けている。


 なんかね、磁石のN極にS極が引っ張られる感じ。 だから無理矢理N極に切り替えて反発するように背けるの。


 声もそう。

 元カノの声が聞こえると、無意識に聞き耳立ててしまうので、直ぐ逃げるようにしている。


 もうこんなことしてる時点で、ダメダメなんだよな。

 情けないったらありゃしない。





 でも、今日の僕は自分でもよく頑張ったと思う。


 修学旅行の班決めで、ヒナタさんと一緒の班になりそうになった時、頑張ってクールに決めてスマートに回避した。

 失恋を引きずる惨めな姿は見せなかったはずだ。

 ちゃんと「水木さん」って馴れ馴れしくならないように呼べたし。


 あとは、僕の個人的なプライドというか意地で、強引に班作って、見せつけるように班のメンバーと仲良しアピール頑張った。

『べ、別に、マサカズたちと一緒の班になれなくても、寂しくなんかないんだからね!』ってなもんだ。



 班の子たちには利用するようで申し訳なかったけど、でも実際にちょっと踏み込んで会話してみると、みんな面白いんだよね。

 普段話さないから知らなかっただけで、個性的な子たちばかり。

 むしろ、僕の方のが地味でなんの取り柄も特徴も無い、つまらない人間だと思わされた。



 やっぱり、失恋を言い訳に勉強に逃げて、一人からに閉じこもるのもいい加減止めた方のがいいかもしれない。


 いい機会だから、班の子たちと交流を深めてみるのも面白そうだ。





 ということで、早速交流を深めようと、僕を含めた5人で放課後集まった。


 最初誘った時、みんな迷惑そうな顔してたけど『親睦会を兼ねた勉強会しようぜ。学年1位舐めんじゃねーぞ』と誘ったら、みんな喰いついてくれた。




 みんな僕なんかよりも年季の入ったぼっちの先輩だ。

 僕なんてまだ精々1か月程度。


 なので、ぼっちあるある的な「こんな困った時は、自分はどうしてるの?」ていう話題を振ると、ぼっち先輩達は盛り上がってくれた。


 例えば、まずはジャブとして「隣の席の人が、消しゴム落として気が付いていない時、どうしてる?」という質問に対して


「見なかったことにする為、読書を始める」by佐田

「テレパシーで相手に伝える」by近藤

「気配消してひっそり拾って相手の机に置く」by霧島

「消しゴムから始まる禁断の二人(男x男)を妄想する。なお、相手が女子ならもっと遠くへ蹴とばす」by鈴木


 うん、こいつらダメな奴らだ。

 唯一まともなのが霧島さんだけじゃねーか。

 いや、霧島さんも大概か。気配消すって忍者かよ。


 それよりも鈴木さん、君に何があったの? 僕で良ければ相談にのるよ?




 じゃぁ、コータ君ならどうするの? と聞かれたので、僕は言ってやったね

『落とし物箱に届ける!』


 あれ? みんなガッカリ顔するの止めてよ。

 ぼっち歴短いけど、そういう顔されるの、心臓に悪いの君たちも知ってるでしょ?

 僕、メンタル弱いんだから!


『じゃぁ次の質問! 勇気出して拾ったら実は消しゴムじゃなくて酢コンブの箱だった時、どうする?』




 結局この日の勉強会は、最初の10分くらいしか勉強をせず、なんだかんだとお喋り(大喜利)で盛り上がった。







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