#06 別れがもたらしたコト

 ※マサカズ視点





 修学旅行をひかえ、クラスで修学旅行の班決めをしている時に事件が起きた。



 班決めは、各人話し合って5~6人のグループを作ることになっていた。

 男女混合可で、俺は当たり前の様にコータとケンを誘って、まず3人で固まった。


 そこへ、サキがクミと水木ヒナタを連れて、俺たちに合流しようとした。

 まぁ、ケンとサキは付き合ってるから当たり前だし、どうやらサキとクミは、コータ達が別れたことをまだ知らない様だから、仕方ない。


 でも6人で固まったと同時に、コータがはっきりとした口調で話し始めた。


『ごめん。 僕とさん、もう別れてるから、このままこの6人で組むと空気悪くしてしまう。 だから僕が抜けるよ。 マサカズとケンのこと、よろしくね』

さんもごめんね。嫌な思いさせちゃって』


 そう言って、俺たちが唖然あぜんとしているのを余所よそに、コータはスタスタと他のクラスメイト達の方へ歩いて行ってしまった。


「え!?え!? どういうこと???」

「別れたって??? ウソでしょ!?」

「・・・・」


 サキとクミはやはり知らなかったようだ。

 水木ヒナタは、まさかここでコータがあんなことを言い出すとは思ってもいなかったのか、とても気まずそうにしている。


 俺とケンは、顔を見合って、溜息しか出なかった。



 コータの方を見ると

『一人あぶれちゃったんだけど、だれか僕と組んでくれる人いない~?』

『あ、佐田くん今一人? じゃぁ僕と組もう! お?、近藤くんも一人? よし!決まりね!』

『あとは~、霧島さんも一人? 良かったら僕達と組まない? 鈴木さんも一人なら是非僕たちと!』


 普段ぼっちのクラスメイトにガンガン声かけて、あっという間に班を作ってしまっていた。


 思わず「相変わらず、すげぇな、コータ」と俺がこぼすと、ケンも「まぁ、少し前よりも元気出てるみたいだし、いいんじゃね?」と苦笑いで零していた。



 サキとクミはというと、水木ヒナタに「別れたって聞いてないんだけど、どういうこと?」と事情を聴きだそうとしていたが、水木ヒナタは何も答えられずにいた。



 このタイミングだ、と思い、俺から事情を説明した。


「1か月くらい前に、コータから聞いた。 水木さんに別に好きな人が出来てフラれたって」

「俺とケンはその時にコータから直接聞いて知ってたけど、コータに口止めされてたから、誰にも話さないようにしてた」

「サキとクミに話せなかったのは申し訳ないけど、コータはサキたち3人の仲を心配して俺たちに口止めしたんだと思う」

「これ以上の詳しい話は、俺もケンも解らない」


 ここまで話して、ケンに目配せすると、ケンから

「とりあえず、その話は置いといて、班決めの申請、先に済ませようぜ」と言って、申請用紙に名前を書き始めた。


 コータを抜いた5人分の名前を書いて、担任へ提出して5人は解散し、俺は自分の席に戻ってコータを見ていた。


 コータは、新しく組んだ班のメンバーたちとやたら盛り上がっていた。

 普段はぼっちで誰とも関わろうとしていなかった連中が、多少強引とはいえコータに掛ると、時折り笑顔で喋っている光景は、軽い嫉妬さえ感じた。


 ケンも同じことを考えたのか「俺たちよりコータの班のが楽しそうだな」と言っていた。




 今、水木ヒナタは何を思っているだろうか。

 今までコータに誰よりも優先して守って貰っていた立場から、今日のやりとりで「自分はもうコータに」になったと自覚出来ただろうか。





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