#04 親友は思う


 ※マサカズ視点



 放課後、HRが終わるとコータは俺たちに一言挨拶して、真っ先に教室から出て行った。


 俺とケンは部活があるので、着替える為に二人で部室へ向かって歩いた。


「しかし、まさか二人が別れるとは思ってもなかったなぁ」


「あぁ、二人とも真面目で穏やかな性格だったから、本当にお似合いだと思ってたよ」


「まさかヒナタさんが、なぁ・・・」


「なんかさ、すげぇにムカついてるんだけど。でも肝心のコータがああだからなぁ」


「うん、俺らが勝手なことすれば、コータが辛い思いしそうだしな。 コータ絶対自分のせいだって責任感じそうだし」


「今でもそうだからなぁ。相手が別の男好きになってフラれたのに、自分が悪いって普通言わないよな」


「まぁ、ヒナタさんのことは放置するしか無いけど、俺の問題はサキなんだよな・・・。サキだってコータの変化に気が付くだろうし、俺、何か聞かれてもどう答えていいのやら」


「テキトーに、何も聞いてない。聞いても教えてくれない。でいいんじゃね?」


「そうだなぁ、でもサキ、鋭いからななぁ」


「まぁ、頑張れ。 今はコータが一番辛いんだからさ」


「まぁ、そうだな」







 俺とコータは、中学時代に同じサッカー部に所属し、そして同じ高校へ進学し、コータはサッカーを辞めてしまったけど、最も付き合いの長い友人だ。


 俺はコータのことを親友だと思っている。


 コータは、根が真面目な性格で、普段から穏やかでいつも周りの人間を立てる様な奴だ。

 自分は目立たなくていい、自分はあくまでサポート。そんなことを考えて行動するタイプ。


 勉強だってサッカーだって、人並み以上の実力あるのに、ずっと控えめに活躍をしてきた存在だ。

 怒ったり悔しがったりする姿も見た記憶がない。


 だから、コータが失恋の話をしている時のあの悔しさを滲ませる態度は、かなりショッキングだった。


 でも、コータの本当の凄いところは、そんなことじゃない。

 どんな相手でも分け隔てなく接することが出来て、誰とでも仲良くなれる。

 コータが居るクラスでは、イジメや人間関係のトラブルが起きない、とまで言われていた。


 本人はその自覚が無いけど、野性的な感覚とでも言うのか、人と人とのバランスが崩れかけると、ナチュラルにソコに入り込んで、崩れかけたバランスを修復してしまう。


 何せ、水木ヒナタだって元々はそういったトラブルでコータに助けられたことが切欠で、コータに惚れたと聞いていた。 

 なのに・・・



 ん? まてよ・・・

 今日のコータの言動って、見方を変えれば、周りの俺たちやクラスの連中はコータに見捨てられてる状況なんじゃないのか?


 常に周りを気にかけ、バランスを注意していたコータが、他人に目を向けることを止めて、自分の勉強のみに集中してる。

 きっと今、誰かが揉めてもコータは動かないだろう。

 これって、ただの失恋以上に不味いんじゃないのか?


 しかし、そこまで考えたが、別の考えも浮かんできた。


 この状況こそが、コータを裏切った水木ヒナタにそのことを後悔させることになるのでは。

 まさかコータがそこまで考えて居るとは思わないけど、でもこの状況は利用できるかもしれない。

 

 コータの無念を晴らす良い機会だ。








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