#03 親友はすぐ気付く




 翌日、火曜日


 登校し教室に入ると、マサカズが僕の席に座って待っていた。



 マサカズとは中学からの友人で、元カノとの交際に関してよく相談に乗って貰っていた仲だ。

 しかし、彼女に振られて失恋したことは話していなかった。


「コータ、何かあっただろ?」

 朝の挨拶も無しに、いきなり問いただされた。


 いずれ話す必要があったし、これまで相談に乗って貰った恩もあるので、正直に話すことにした。


『ここだと話しづらいから、場所と時間変えたい。ちゃんと話すから』


「わかった。ケンも一緒でいいか? アイツもお前のこと心配してたから」


『うん、わかった』


「じゃぁ、後でな」


 そうマサカズとやり取りしている間に、元カノが教室に入って来るのが視界の端に入り、意図して視線を逸らした。




 ケンは、高校に入ってからの友人だが、マサカズと同じく僕の恋愛相談に乗って貰っていた。

 マサカズもケンもイケメンで女子からの人気が高く、部活は二人ともサッカー部でレギュラーだ。

 マサカズは、今はカンジョは居ないけど、ケンはカノジョ持ち。

 そのカノジョは、僕の中学の同級生で、実は二人を引き合わせたのは僕とマサカズだったりする。


 こんな二人の陽キャが僕なんかと仲良くしてくれるのはとても有難いことで、特に恋愛経験豊富な二人のアドバイスは、僕の初めての彼女との交際で非常に助けてくれた。





 昼休憩、相変わらず食欲が無かった僕は、オニギリ1個とパックのジュースだけ持って、二人の友人と校舎の非常階段に来ていた。


 3人で階段に座り、それぞれ持ってきた食事を取りながら、僕が簡潔に話した。



『土曜日にヒナタさん(元カノ)とデートの約束してて、待ち合わせして会ったら、速攻で別れ話された』

『他に好きな人が出来たらしい。 別れてくれって言われた』

『相手の男のことは何も聞いていない。 ドコのダレだか全く知らない』

『一方的にフラれて悔しいから、勉強して奴らよりも上の成績とってやろうと考えてる』

『そうでもしないと、泣きそうになるから、今滅茶苦茶必死』


 二人は黙って僕の話を聞いてくれた。

 表情を見る限り「やっぱりそんなことだったか」と「なんで?」の”予想通りだけど納得出来ない”とでも考えてるのだろうか、そんな顔してる。


『僕の力不足だ。折角色々相談乗って貰ってたのに、ごめん』


「いや、コータは何も悪くないだろ。謝るなよ」

「そうだよ・・・しかし急に訳わかんないね?」


『僕が気がつかなかっただけで、急じゃなかったのかもしれない。でも、もう考えるの止めた。 余計辛くなるだけだって判ったから』


「そうだけどさー」


『あ、二人とも周りの人には言わないでね。 特にケン、サキちゃんには言わないで』


 サキちゃんというのは、僕とマサカズがケンと引き合わせたケンの今のカノジョだ。

 サキちゃんとは中学の頃から僕たちは仲が良く、一緒の高校に合格した時も3人で喜び合った。


「え? でもヒナタさんが何考えてるのかサキに聞いてもらうのが一番手っ取り早いと思うけど」


『いい!いい!そんなことしなくていいから!』

『二人とも心配してくれて凄く嬉しいよ。特にいま精神的に参っちゃってるからさ。 でもしばらくはこのままにしておいて欲しい。 今は失恋の件を考えたくないんだよ。 ヒナタさんの事考えるのも顔見るのも凄く辛いんだ』


「わかった。でもキツクなったら遠慮なく相談してくれよ?」

「うん、俺らだってコータのこと見てられないくらい心配してるんだからさ」


『二人ともありがと』


「ところで、グループチャット退会したのもそれ絡み?」


『あー、ごめん。チャットアプリ消した。色々履歴残ってるのが嫌で、面倒だったからアプリごと消した』

『だから、連絡したいときは直接電話かけるかメールにして。でもメールもほとんどチェックしないから、急ぎの時は電話にして』


「・・・そうか、相当思い詰めてるんだな」


『思い詰めているというか、雑念や邪念を振り払うのに必死になってる』





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