#02 失恋してからしたコト
自宅に戻ると『彼女とデート』と言って出掛けたのに1時間もせずにノコノコ帰って来たことが恥ずかしくて、家族と顔を会わせないようにコッソリ自室に戻った。
久しぶりのデートで気合入れてオシャレした服を脱ぎ捨てて、部屋着のハーフパンツとTシャツに着替えベッドに倒れるように横になる。
自室で一人になったせいか、少し冷静になってきた。
『僕みたいな冴えない男が失恋なんて、極ありふれた出来事なんだ』
『この先、大人になっても、きっと僕は失恋を何度も繰り返すだろう』
『こんなことでいちいち泣いていちゃダメだ』
『もっと辛いことは沢山ある』
『泣いたら負けだ。 彼女にも、彼女が好きだと言った男にも負けてしまう』
少し冷静になって、感情的になることは収まったけど、相変わらずネガティブな思考がぐるぐる渦巻く。
そうだ、勉強しよう。
元カノや相手の男(誰か知らないけど)よりも良い成績とってやる。
奴らに同情されるくらいなら、同情する余地を与えないように奴らよりも上に立ってやる。奴らに憐れまれるのなんてまっぴら御免だ。
そう決意(強がり)し、この週末はひたすら勉強だけをして過ごした。
◇
週明け月曜日
教室では、同じクラスである元カノと目を合わせないように、ひたすら参考書とノートにかぶりついて勉強した。
休憩時間、友達に話しかけられても『悪い。今のんびりお喋りする余裕がない』と断って、ひたすら勉強した。
食欲が無かったから、昼休憩は図書館に行って一人で勉強した。
放課後は、速やかに席を立ち、真っ直ぐ自宅に帰った。
家に帰ってからも夕飯とお風呂以外は勉強していた。
でも、勉強していると、どうしても頭に浮かんできてしまう。
僕を振った、元カノのことが。
今日一日、彼女がどう過ごしていたか知らない。
同じ教室に居ても、(気にしたら負けだ)という強迫観念があり、意図的に頭の中から彼女のことを追い出していた。
悔しいけど、今のところ奴らのが勝っている。
振られてイジけている僕は情けないことに圧倒的に負けだ。
ふいに(僕を振ったことに負い目を感じてほしい。僕に対しての罪悪感を感じてほしい)という気持ちが顔を覗かせるが、逆に(僕を振ったことなど罪悪感すら感じておらず、にこやかな笑顔で過ごしているのを見てしまったら僕の心が折れてしまう)というネガティブな考えが直ぐに沸き上がり、(そうだよな。僕よりも好きな男が出来て、邪魔な僕を排除出来た彼女は、別れる前よりも幸福感を感じているだろう。 やっぱり彼女のことを気にした時点で僕の負けだ)と改めて、『気にしたら負け』だという気持ちを強めた。
時計を見ると、0時前だった。
いい加減寝るか、と今日の勉強を終わらせることにした。
『そういえば、スマホ』と急に思い出し、スマホを手に取る。
土曜の朝から放置していた為、履歴が色々溜まっていたけどスルーして、アルバムを開く。
元カノを写した大量の写メを片っ端からまとめて削除する。
次に、元カノとのグループチャットがあるチャットアプリをアンインストールし、これまで元カノから貰ったメールの削除をし、ついでに複数あったゲームのアプリも全部アンインストールしてから電源を落とした。
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