失恋しても僕は泣かない。泣いたら負けだ。

バネ屋

失恋の章

#01 プロローグ




「ごめんなさい、他に好きな人が出来たの。 私と別れて下さい」

「コータ君は何も悪くないの・・・悪いのは私なの」




 なんだ、この状況。 

 休日に待ち合わせて会って10分。


 思いつめた顔してたから、笑って貰おうと一生懸命話しかけてたらコレだよ。

 久しぶりのデートだと思って、さっきまでウキウキしてた自分が無性に恥ずかしい。


 そうか、最近二人きりで会えなかったのもそういうことか。

 このまま居たら、泣いちゃいそうだからさっさと帰ろう。


『うん、わかった。 じゃぁ』



 カノジョ・・・じゃなかった、元カノの顔を、もうまともに見ることも出来ず、そそくさと背を向けその場を離れた。



 大好きだった彼女。

 僕だけを見てくれていると信じていた彼女。

 さっきまでそう思ってたのに、振られた途端、全く別の物に感じる様になってしまった。


 しばらく二人で会えなかった間も(次に会うときはドコに遊びにいこうか。 どんな話しようか)と彼女のことばかり考えて居たけど、彼女は僕以外の男のことを考え、僕のことを考える時は「どうやって別れようか」と考えていたのだろう。

 



『はぁ、みじめだ。 情けない』

 下を向いてトボトボ歩きながら、思わず一言こぼれる。


 そもそも、僕には勿体ない女性だったんだ。

 ぎたるはおよばざるがごとし、だ。

 ちょっと違うか。


 目をく整った容姿に、艶のある綺麗な黒髪。

 女性としてとても魅力的なスタイル。

 真面目で落ち着いた性格と言動。

 誰もが清楚な女性と認めていた非の打ちどころが無い、素敵な女性だった。

(その分、同性からの妬みなんかで苦労していたそうだけど)


 自分には手の届かない存在だったハズなのに、彼女からの告白に舞い上がり、身の程をわきまえずに調子に乗ってしまったのがそもそもいけなかったのだろう。

 きっと周りのみんなも、不釣り合いだと思っていたに違いない。



 でも、僕だって、そんな彼女に相応しいカレシであろう、と頑張ったんだ。

 必死に成績を上げようと勉強は頑張ったし、二人で会ってる時も紳士的に振舞った。

 彼女のことを自分のことよりも大切にしてきたつもりだった。

 常に彼女に気を遣い、彼女の意見を優先して、彼女が嫌がることは決してしなかった。


(こんなことなら、ガマンせずにさっさとやることやっておけば良かった)と下衆ゲスな考えが浮かんでしまう。



 頭を振ってよこしまな考えを振り払い、意味も無く走り出して叫ぶ。

『チクショー! オンナなんて嫌いだぁぁー!』








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