おまけ

今、お店の裏口で桜花さんを待っている。

フラワーショップあきづきの定休日。ついに今日、僕の念願が叶う。

裏口が開いた。


「お待たせしました」


開いた扉から桜花さんが現れる。動きやすそうな服を着て、帽子をかぶっている。適度に筋肉の付いた体がよく見える。

朝の人が少ない時間帯で良かった。

しかし、僕は不満だった。


「桜花さん、どうして……」


「何でしょう?」


「どうしてポニーテールじゃないんですか!」


桜花さんは驚いた顔をした。そして呆れたような顔をした。


「そんなに見たいですか?」


「見たいです。僕がポニーテールにします!」


部屋の中に戻り、桜花さんを椅子に座らせた。僕はくしで桜花さんの艶やかな髪をとかしていく。一房も残さず高めにまとめる。だが、やはり難しい。理想通りとはいかない。


「すみません、力不足で」


「意外と出来てると思いますよ?」


「やっぱり桜花さんが結ってください」


僕はくしを桜花さんに返した。

桜花さんは慣れた手つきで髪を結う。それすら綺麗だ。


「どうですか?」


桜花さんはポニーテールを撫でながらこちらを向いてそう言った。


「うっ、素敵です……!」


「ありがとうございます。ほら、早く行かないと暑くなっちゃいますよ」


桜花さんは照れたように早口でそう言って靴を履き始めた。

やっぱり今日も桜花さんはかわいい。

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街の花屋の桜花さん 大西 詩乃 @Onishi709

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