デート2

100円ショップに行って、母の日の飾りを買った。毎年新しい飾りにしているらしい。

その後、商店街を歩いて、古本屋と文房具屋に行った。どちらも桜花さんの行きたいところだったので桜花さんは気にしていたけれど、桜花さんの好きなものが知れて良かった。

日が落ちてきて、街灯が灯る。商店街を抜けてどこか食べれる所を探した。


「何か食べたいものありますか?」


「うーん、美味しければどこでも……」


この辺りに何があるかわからないな。

調べよう。


「うわっ、ここすごい焼肉激戦区ですよ」


スマホアプリの結果を見せる。


「た、確かに多いですね。なら、焼肉食べましょう、きっと美味しいです」


初めてのディナーが焼肉だなんて誰が予想できただろうか。

でも桜花さんは食べたいみたいだ。


「じゃあ、この評価が高いところに行きましょう」


「いいですね」


そして、また歩いた。

店に入って、メニューを頼む。桜花さんはカフェにいたときよりも楽しそうだ。

頼んだ物が来たとき辺りで桜花さんは口を開いた。


「私、こうやって誰かと焼肉を食べるの初めてなんです」


「え……意外です」


「そもそも誰かと出かけるのも久しぶりです。だから今日、緊張していたんですけど、良かったです。楽しくて」


桜花さんは今日一番の笑顔を見せてくれた。


「僕も楽しかったです」


「はい。あ、そのお肉焦げちゃいますよ」


「うおっ、すいません……」


そんな会話を交わして、食後のデザートまで食べて店を出た。


「送りますよ」


「なら、お言葉に甘えます。お家はどの辺りなんですか?」


「うーん、中学校の向こう側の方です」


「意外と近いんですね」


来た道を戻るように歩いて帰る。たわいもない話をしていたら、すぐに着いてしまった。桜花さんといると、時間の流れが早くなる。


「ありがとうございました。もう真っ暗なのでお気をつけて」


お店の裏口で、そう言われた。久しぶりに来たけれどあの頃とあまり変わっていなかった。


「はい……」


このまま帰ったら。


「それじゃあ」


変われない気がしてきた。


「あの、桜花さん」


「?、はい」


「あの……」


「なんでしょうか」


「好きです。あなたのことが」


桜花さんは驚いた顔をして、それから段々と赤くなっていった。か、かわいい。


「へ、返事は……」


「……」


桜花さんは俯いたまま話さない。


「あの、桜花さん?」


「……かっ、考えさせて下さいっ」

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る