アタックしてみる

今日はバイト帰りに寄ってみる。

あわよくば食事に誘おうと思って。

カランコロンと、いつもの音がするドアを開ける。


「いらっしゃいませー」


桜花さんがいつものように挨拶した。もしかしたらポニテかもしれないと思ったけど、そんなことは無かった。

店内は遅い時間だからか、人はいない。


「あのー、観葉植物って何かオススメとかありますか?」


「あ、はい」


レジカウンターで雑誌を読んでいた桜花さんが向かってくる。

桜花さんがワンピースを着ている!いつもはジーンズとかなのに!ひらひらしたものは着ないのに!

ハッ、もしかして今日誰かと会うのかも……。


「サボテンの次は観葉植物ですか?」


「へ?あ、はい」


「色んな植物に挑戦するの、良いと思います」


あなたにそんなこと言われたら、僕の家は植物だらけになってしまう。


「がんばります」


「フフ、まずは初心者向けのにしましょう。お家に日の当たる場所はありますか?」


あ、笑った。桜花さんはあまり笑わない。貴重なものが見れた。かわいい。


「あります。狭いですけど」


「そうですか。でも無理して置くことはないので、日陰でも育てられるものにしましょう」


「わかりました」


「今お店にあるものだとパキラとか、ガジュマル、サンスベリアですかね。どれも縁起のいい植物です」


「観葉植物に縁起とかあるんですか」


「はい金運とか厄除けとかです」


「へ~、初めて知りました」


ああ、植物のこと大好きなんだろうな。すごく楽しそうな顔をしてた。


「この中で一番のオススメはなんですか?」


「んー、サンスベリアですかね。水やりを忘れてもけっこう耐えてくれるので」


「それは僕にぴったりですね」


「あ、その……そんなつもりで言ったんじゃ。すみません」


「へっ?いえ、全然大丈夫です」


サボテンのときの会話を覚えててくれたのかと思ったが、謝らせてしまった。というか落ち込んでらっしゃる。かわいいとか言ってる場合じゃない!


「あの、買います!サンスベリア買います!」


「あ、ありがとうございます」


桜花さんはサンスベリアを持ってレジに向かった。僕もそれについていく。


「お会計、こちらになります」


お金を払う。桜花さんがサンスベリアを袋に入れた。


「あの、今日このあと予定空いてますか」


「え、えっと……?」


「お店が終わったら一緒に食事、とかどうですか」


「すみません。お客様からのそういうものはお断りさせていただいてます」


少し申し訳無さそうに桜花さんは言った。


「なら、友達になりましょう」


桜花さんは目を見開いた。


「え、か、考えて……おきます」


ちょっと困ってる。それに小さい声だった。もしかしたら恋人がいるのかもしれない。

サンスベリアを受け取る。


「ありがとうございました」


「また来ます」

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