街の花屋の桜花さん

大西 詩乃

今日の桜花さん

4月、今日は弟の入学祝いで花を買いにきた。

フラワーショップあきづきの朝は早い。弟の入学式に間に合ってしまうほど。

そして今日は勢い余って早く来てしまった。

あっ、桜花さんが出てきた。開店の準備にきたんだ。

ポ、ポニーテールにしてる……。確かに今日は4月にしては暑いけど、良いのかそんな姿をさらして!

ああ、髪を上げていると何だかスポーティーに見えるなぁ。花を運んでいると尚更。公園で一緒にランニングとかしてくれないだろうか。

朝焼けに照らされる桜花さんに見とれていたら、準備は終わったようで中に入ってしまった。

僕も入ろうかな。いやでも、さすがに怪しまれるだろう。もうちょっと待とう。10分くらい。


カランコロンと音を立ててドアを開ける。

書類を整頓していた桜花さんと目が合う。少し驚いた顔をしていた。


「いらっしゃいませー」


と、桜花さんはいつも通りの挨拶をした。僕は軽く会釈をした。


「サボテン、どうですか?」


なんと、桜花さんから話しかけて貰えた!ポニテの桜花さんと話せるなんて。どうやら先月買ったサボテンの話のようだ。


「覚えてらっしゃるんですか……」


「ええ、まあ、常連さんですし」


感動だ!彼女の記憶の常連さんという枠に入れただけで嬉しい。


「サボテンは順調ですよ。お水をやらなくても良いので、忘れがちですけど」


「そうですか、これから暑くなるので気をつけないといけませんね。それと、今日はどうしてこんな早くに?」


「今日、予約してきたんです」


「あ、もしかして入学祝いの方ですか?」


「そうです、そうです」


桜花さんはスタッフルームへ入った。しばらくして、花束を抱えて出てきた。


「ご注文いただいた入学祝いの花束です」


「ありがとうございます」


「スタンプ押しますか?」


「押します」


花束を置いて、お金を出す。それを精算した桜花さんはスタンプを押した。肩から落ちたポニーテールが綺麗だった。


「お釣りとレシートとスタンプカードです」


受け取って、花束を持つ。


「ありがとうございましたー」


「……あの」


「なんでしょうか?」


「素敵です。その髪型」


桜花さんはポカンと口を開けて、ぼう然としていたが、見る見るうちに赤くなった。


「どうも……」


と目をそらした。

桜花さんはいつも可愛い。

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