四季折々は目の前に

「季節の移ろいが見たいです」

 私の言葉に八津先生は顔をしかめた。うなじのあたりで束ねられた黒髪が、頭の動きに合わせて揺れる。

「講堂の窓から見えるだろ」

「あれは電子モニターじゃないですか」

「わがまま言うな」

「じゃあ、あの絵ください。先生が描いたやつ」

「……なんで知ってる」

「有名ですよ。先生、もともと美術の先生だったんでしょ」

 所詮まがい物だ、期待するなと言いながらも、先生は次の日、それを私にくれた。優しい人なのだ。白い布を解く。小さな長方形のカンバスが現れる。

「先生、私もう地球に降りれなくても構いません」

 今、四季折々は目の前に。

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