窓際で死んだふりをする

 窓際で死んだふりをする。汚いので、本当は床に倒れるのは嫌だった。でもサッカが喜ぶから。

「少し口開けて」

 わたしの顔のそばに、中庭から勝手に摘んできたハナミズキを撒いて、サッカは三歩下がる。言われた通りに口を開く。顔にかかる髪の隙間から、二階堂の席が見えた。あいつはサッカが好きだ。授業中にサッカの方ばかり見ている。けれどあいつはサッカがわたしの死体にしか興味がない事を知らない。

「何考えてるの」

 サッカが戻ってきて、私の首に手をかけた。誰にでも好かれる黒く丸い目がきれいだ。サッカという名前にぴったり。酸素が足りない。サッカのこと以外考えられない。

「うん、よくなったよ」

 ぶわ、と一気に空気が流れ込む。むせそうになるのを堪えた。私は死体だから。

 サッカがレンズを覗いてシャッターを切るたび、許容しきれないほどの愛が寄せる。

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