またひとつ失くした

 走る車を見ている。それぞれに別の人間が乗り、別の思考を持って何処かへ向かうことが素晴らしくて泣けてくる。

「春折、式場に着いたら教えた通りに」

 風間さんは今日もシワ一つないスーツを着て、ハンドルを握っていた。荷台にゴミを積んでいる車が、窓の左から右へ流れる。あのゴミはどこからきたのか。中身は何なのか。生活の中で不要なものとは、なんだ。次の誕生日が来たら俺も免許をとろうと決める。

「春折、聞いてるか」

「今朝のあれ、友達だったんですよ」

 見たくないものばかり見える。またひとつ失くしたのだと、気づくのはいつも事が起きてからだった。錦が笑って飛んだ時からだと思う。俺のことを恨んでいるのか。だったらなぜあんなに優しく笑っていたのか知りたい。

「大丈夫、仕事はちゃんとやります」

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