好きな反対は嫌いじゃない
誰が辰美を救ってやれるというのか。
「好きの反対は嫌いじゃないんだよ、何かわかるか」
頬が痛む。肩も、手も、腹も、足も。血の味がする。
「俺はお前を殺したい」
「じゃあ早く殺してくれ」
耳鳴りがして、頭を蹴られたとわかった。俺はボールのように床を少し滑って、そのまま起き上がることもしない。うんざりしていた。毎日変わらないこの部屋も、殺したいと繰り返しながら俺を生かすために食事まで用意する辰美も、全てぐちゃぐちゃになってしまえばいい。なんで俺はここから出られないんだっけ。最後に空を見たのはいつだ。辰美が最後に笑ったのは。
「お前、死んだら朝生のところに行くだろうが」
辰美は昔から信心深い。そして俺の姉を愛している。好きの反対が殺意なら嫌いの反対は生への祈りか、辰美。あの時俺が死ねばよかった。
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