きっと、きみは戻らないよ

「役目を果たしたら戻ってくるから」

 そうやって軽々しく言うけど、きっと、君は戻らないよ。現に天使に選ばれた子供は今まで誰一人戻ってきていない。シスターレミゼアが地下室で夢のように沢山の花を咲かせているのを知っているか。僕はあれらの根元に名前があるのを見た。君のものはないと思う。今はまだ。

「ヤミュー、おれの大事な弟、愛してるよ」

「嘘つけばか」

 本当なら今すぐ僕と一緒に逃げてくれ。それが愛だろ。だって三歳の僕は君に手を引かれて、走ってここへ来た。

 君は僕の胴に腕を回してみせる。僕よりも年上なのに背が低いところが好きだよ。でも天使になったら肉体を捨てると聞いた。翼のように広がる両腕からまばゆい光を沢山注いで、この世の不要なものを焼くんだろう。神様の代理だ。名誉なことだ。ねえ、僕らの故郷を焼いたものを、なんと呼んでいたっけ。

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