第66話 甘やかしの刑・・・・・・執行?

「ささっ!こちらに来てくださいっ」


 楓はそう言って自分の太ももをぽんぽんと叩いている。

 蓮はどうしたものかと悩んでいると、楓は蓮の頭をグイッと少し強引に自分の太ももに乗せた。


 柔らかい感触とすべすべの肌がとても気持ち良い。


(こんな枕があったら絶対に即購入なんだが)


「ふふっ、蓮くん可愛いですよっ」

「・・・・・・・・・」


 蓮は何も言えなかった。ただ、この感触、この時間を楽しみたかったのかもしれない。


「どうですかっ?」

「えっ?あー、凄くいいです」

「本当ですかっ?」

「俺が嘘をつくとでも?」

「蓮くんは素直じゃないので」

「心地良いというか、安心する」

「それは良かったです」


 楓は、フニャッとした笑顔で蓮の方を見てきた。蓮は恥ずかしくなってしまい、楓の太ももに顔を埋めて、自分の顔が赤くなっているのがバレないように必死に隠した。


 隠そうとして、顔をもぞもぞと動かせば動かすほど、楓の太ももの柔らかさが顔全体に伝わってくる。


(しかし、顔を埋めると・・・・・・当然のことだが、息がしづらいな)


 このままでは死ぬと思ったのか、蓮は頭を動かして天井が見えるような姿勢になった。


「二人とも仲直りできてよかったですね」

「あぁ、そうだな。あの二人が仲良くバカしてない所なんて想像できないからな」

「ふふっ、今日一日お疲れ様ですっ」


 楓はそう言って蓮の頭をよしよしと小さな子供の頭を撫でるように、優しく撫でてくる。

 小さな手に対して、この大きすぎる包容力はなんなんだろうか。


「ちょっ?!な、なんだよ、いきなりっ」

「頑張った蓮くんにご褒美ですっ」

「俺は甘やかしの刑じゃなかったのかよ」

「これはその甘やかしの刑も含まれてます」


 楓は「いいじゃないですか」と言って、蓮の頭を撫で続けている。


「それに・・・・・・蓮くんの顔が赤くなっていますし、甘やかしの刑もちゃんと効いてるということですよねっ?」

「こ、これは暑いだけで・・・・・・」

「素直じゃないですねぇ〜」


 楓は全てわかっていますよと言いたげな顔で蓮の顔を微笑むように見る。


 蓮はその顔を見て、自分の中で何かが外れたような気がした。


「あれっ、もう終わりますか?」


 蓮は体を起こして、楓をお姫様抱っこでソファに持っていく。


「れ、蓮くんっ?!ど、どうしたんですか?」

「いいから、ソファに座らせただけだけど」

「ソファって・・・・・・蓮くんの太ももの上じゃないですかっ!」

「あんまり変わらないよ」

「変わりますっ!蓮くんの顔がさっきより近いですし」


 蓮は楓を自分の太ももに座らせ、いつでも楓とキスができるような状態だった。


 しかし、蓮は楓の唇に今は興味がなかった。


 蓮は少し頭を下げて楓に付いている山二つに顔を埋めた。


「ど、どうしたんですかっ?!」

「ご褒美」

「やっぱり欲しかったんですねっ?さっきのじゃ満足しませんでしたっ?」


 蓮は楓の胸の中で頭を縦に動かす。


「ふふっ、急に甘えん坊になりましたね」

「いいだろ?もう、なんか恥ずかしくなくなった」

「はいっ、素直な蓮くんも可愛いですし、嬉しいですっ」


 そう言って、笑っている楓の心臓はドクンドクンと鼓動が速くなっていた。


「よしよし、お疲れ様でした」


 また楓は蓮の頭を撫でてくる。さっきよりも優しい感じで撫でてくる。

 蓮はその包容力とあまりの心地良さに段々とまぶたが落ちてきて、自然と眠りについていた。


「あ・・・・・・寝ちゃった」


 蓮はスースーと気持ちよさそうに眠っていた。


「ふふっ、本当に可愛いですっ」


 そう言って楓は蓮の前髪を横に分けて顔が寝顔が良く見えるようにした。


「また行きましょうっ、次は二人で」

「大好きですっ」


 そう言って楓は蓮のおでこにそっとキスをした。

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