第64話 水族館④

「だいぶ遊んだなぁ」

「はい〜、もうクタクタです」


 楓はそう言って、座りながらふぅっとひと息ついている。


「そういえばメッセージ来てたな」


 さっき拓人からメッセージが来ていた。


(楓とのデートに夢中で未読無視していた・・・)


 メッセージの内容は『仲直り大成功!』と送られてきていた。


 蓮はそれを見た時に、自分の胸がなんだか暖かくなるような感じがした。


「楓、千夏と拓人は仲直りしたみたいだぞ」

「本当ですかっ?!よかったです〜」

「あの二人には、もっとバカップルぶりを周りに出していってほしいもんな」

「あの二人が仲悪いのはちょっと嫌です」


 すると、拓人から電話がかかってきた。


「なんだよ」

「本当ありがとな」

「別に、なにもしてない」

「まぁ、蓮がそう言うならいいけどさ」

「今どこいるんだ?」

「最後に記念に四人で写真撮ろうぜ」

「わかった、入口で待ってて」


 そう言って、電話は終了した。


「楓、みんなで写真撮るから入口に行こう」

「わかりましたっ!」


 楓は「でも本当によかった」と言って、座っていた場所から立ち上がった。


「大丈夫か?疲れてないか?」

「大丈夫です!子供じゃありませんからっ」

「ならいいけど」

「い、一応聞きますけど、疲れたって言ったらなにしてくれたんですか?」


(改めて聞かれると少し恥ずかしい)


 そう思いながらも、蓮は楓の真っ直ぐな瞳を見てしまったらもう誤魔化せない。


「おんぶとか?」

「おんぶは、恥ずかしいので今はやめておきます」

「わかった」

「そのかわりに!手を繋いでくださいっ。それで頑張れます」

「頑張るって言っても、歩くだけだけどな」

「もうっ!いいんですっ!」


 そう言って、楓は子供みたいに頬を膨らませて、駄々をこねていた。


 蓮は楓の駄々をこねる姿を見て可愛らしいと思って、ぼーっと眺めていた。


「こらっ〜聞いてるんですかっ?」


 楓に頬を引っ張られて、やっと我に帰った。孫を見るお爺ちゃんはこういう感じなのだろうか。一つだけ言えることは、可愛かった。


 これだけは言える。


 結局楓と手を繋いで、入口の方に向かって行った。


「遅いぞー」

「あっ!手繋いでる!」

「うるせぇな、そういうお前らはなんか変なお揃いの被り物被ってるじゃねぇか」

「変じゃないよ!アンコウだよ!」


(そのセンスはどうなんだ?)


 蓮はアンコウと言われた時に、アンコウの被り物って可愛いのか?それともカッコいいのか?と千夏と拓人の被り物を選ぶセンスが悪いのか、それとも二人とは違う自分が悪いのか考えていた。


(可愛くないって思ってしまったことは言わないでおこう)


「か、可愛いっ・・・・・・」

「え?」

「ブサカワ・・・・・・とっても可愛いですっ!」


 なんと楓がアンコウの被り物を可愛いと言い始めたのだ。


「やっぱりかえちゃんはわかってるねぇ!」

「千夏さんっ。近いですよぉ」


 千夏が嬉しかったのか、楓にすりすりと頬を擦り付けている。


「じゃあ写真撮ろうか」

「かえちゃんも一緒の被り物をかぶろーよ〜」

「そうですね・・・・・・お揃いの方がいいですよね」

「え?別にお揃いじゃなくてもいいんじゃ」

「いえっ!買いましょう!」


 楓の目がいつも以上にキラキラしていた。そういえば楓はおじさんのぬいぐるみが好きだったり、なんか変なのが好きだった。


「俺は要らないからな!俺は買わないからな!」

「えぇっ〜買いましょうよっ!蓮くんとお揃いがいいです・・・・・・」

「かえちゃんもこう言ってるんだよ〜?」

「ぐぬぬ・・・・・・」

「観念しろ」


 拓人が肩に手を置いてニヤニヤしてくる。


「いや!俺はその被り物は絶対・・・・・・!」


 楓と千夏が目をキラキラさせて拓人は早く観念しろと、この状況を面白がっている。


◆◆◆


 俺たちは水族館のスタッフさんにお願いして、写真を撮ってもらうことにした。


「それじゃあ、撮りますねー?」

「はーい!」


 千夏な元気な声と共に右手を挙げて返事をしている。


「はいっ、チーズッ」


 二、三回シャッター音が鳴り、俺たちはスタッフの方に「ありがとうございました」と一言お礼を言って、撮ってもらった写真を見た。


 そこには、同じ被り物をした四人の男女の姿があった。


 俺は結局あのあと、結局という言葉に負けて、買うことを決めた。

 たしかに、近くで見ればブサカワなのかもしれない。


「まったく、いい写真だよ」


 俺は一言、撮ってもらった写真を見て、周りには聞こえないようにそう呟いた。





あとがき


 まずは、謝らせてください。ごめんなさい。

 忙しかったのもありますが、一ヶ月間サボっていました。他の小説を書いているとはいえ、普通にサボっていました。


 これからも、サボったりすると思いますが、読者様方は心の広い方ばかりだと聞いているので、これからも何卒よろしくお願いします。


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