第61話 水族館
「結構近かったな」
電車に乗り、そのあとは歩きで大体20分くらいで水族館に着いた。
「わ〜、結構大きいんですね・・・・・・」
「はしゃぎすぎて走るなよ?」
「そ、そんな子供じゃありませんっ!」
「本当かなぁ」
「本当ですっ」
蓮がからかうと、ムスッとした表情でそっぽ向くので、それがまた可愛らしい。
蓮は楓のご機嫌を取るために、頭を撫でておいた。
「頭を撫でればいいってモンじゃないんですからね」
「それにしては、嫌そうじゃないな」
「き、今日だけは特別に許しておきます」
「ははっ、ありがとう」
そんなことをしていると、拓人が蓮たちのことを呼んでいるので、すぐに拓人の方に向かう。
「はいこれ、蓮達のチケット」
「お、さんきゅー」
「ありがとうございますっ」
拓人が自分のと千夏の分のチケットだろう、その2枚を手に持って、周りをキョロキョロを探している。
「あれ?ちーは?」
「千夏さん・・・・・・えっと、千夏さんでしたら」
楓の背中を見ると、楓の背中を盾にして拓人から見つからないようにしてる千夏がいた。
そこまでして、拓人と目を合わせたくないのか、と少し呆れてきた。
ただ単に蓮と楓が喧嘩をしたことが無いっていうのも原因の一つかもしれない。
「ちー、バレてるぞ」
「・・・・・・・・・なんのこと」
「楓さんの背中に隠れてることだ」
観念したのか、千夏は楓の背中から隠れるのをやめて、下を向いてそれでも顔を見せないような感じで出て行った。
「ちー、顔を上げないと俺はチケットをやらんぞ」
「ゔぅ〜わ、わかった」
そう言って、千夏は顔を上げて拓人の顔をジッと見ていた。
「な、なに?早くちょーだい」
「あっ、ごめん。可愛すぎてつい見惚れてたわ」
「なっ!?・・・・・・うるさい」
千夏はそう言って、拓人の横腹をパンチしていた。しかし、その威力はふにゃふにゃしているパンチだった。
(猫パンチの方が威力はあるな)
「なんか、あの二人いい雰囲気じゃないですか?」
「そうだなー、これだったらすぐに仲直りできるかもな」
「千夏さんすごく嬉しそうです」
「拓人の言うこともわからなくもないからな」
「えっ?蓮くんも千夏さんに見惚れるんですか?
た、確かに可愛いですよ?可愛いですけど・・・・・・」
(なんか、絶対変な勘違いしてるよな?これ)
「俺が楓に見惚れるってことだよ」
「そうですか・・・・・・って、えっ!?」
「さっ、この話はいいから、中に入ろうな」
そう言って、その話を終わらせて、拓人達と一緒に水族館に入っていく。
中には色々な魚はもちろん、ペンギンやアザラシなどもいた。
「み、見てくださいっ!ペンギンですよっ!」
「そうだな、めちゃくちゃ可愛いな」
「ですね〜」
「おっ、飼育員の人がエサやるのか」
飼育員の人がバケツに入っている魚をペンギン達にあげている。
「ま、丸呑みしてるな・・・・・・」
「し、してますねっ。大丈夫なんでしょうか、喉に詰まったりしないんでしょうか」
「でも、エサ食べてる姿も可愛いな」
「さっきから、蓮くん可愛いしか言ってないですよ?」
そう言って、こっちの方を見ながら呆れているのか、ペンギンに対して嫉妬心を抱いているのか、分からなかった。
「大丈夫、これは癒されてるだけで、恋愛感情とかはないから」
「私では癒されないと?」
「なぜそうなる・・・・・・んなわけないだろ、いつも癒されてるよ」
「これは、帰ったら甘やかしの刑ですね」
(ぐっ・・・・・・受けてみたい自分がいて、なんか嫌だ・・・・・・)
「なんだそれ、ちょっと怖いな」
「とてもとても、甘やかします。ペンギンには負けません」
「そんな張り切らなくても・・・・・・」
俺は、先に歩いている楓の背中をくっついて行く。その後ろを拓人と千夏が少しずつではあるが、さっきよりも雰囲気が良くなってついてくる。
この仲直りはいい方向に向かっている気がする。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます