第59話 Wデート①(朝)

「蓮くん?もうそろそろ起きないと、集合時間に間に合いませんよ?」


 楓は今日約束があるのにまだ寝ている蓮を優しく起きるよう促す。


「大丈夫だ、あと・・・・・・5分」

「もうっ、起きない悪い子にはお仕置きしますよ?」

「ほー、そりゃ怖いなー」

「そうですっ!怖いですよ!だから早く起き・・・」

「たとえば?」

「た、たとえばですか・・・・・・え、えっと」


 そう言って楓はうーんと考えている。楓のことだ何も考えていなかった。というより、相手を傷つけないで、どうやったらお仕置きになるか考えているのだろう。


「今から、10分間ギューします」

「それは俺にとってご褒美の方が近いなぁ」

「じ、じゃあ・・・ち、ちゅーします・・・よ?」


 俺はベッドに寝ているので、楓の表情が見れない楓の表情を見るために、起きようかと考えた。しかしベットの心地よさには楓の表情が見たいという欲だけでは勝てなかった。


「・・・・・・それもご褒美だぞ」


 決してお仕置きではない。しかし、自分の身が持たないかもしれない。


「う〜、こうなったら・・・・・・ご飯抜きです」

「・・・・・・・・・まぁ、あの美味しいご飯を食べれないのは、今後の人生に関わるからな」

「そんな大袈裟な」


 と楓は少し呆れている。俺は重たい瞼を開けて、まだ頭がポワポワしている。


「さっ!顔を洗ってきてくださいっ」

「んー、了解」


 そう言って、蓮は顔を洗うために洗面所に向かった。顔を洗って、鏡とにらめっこをしようとしたが、髪の毛が爆発していた。


「ふふふっどんな風に寝たらこんな寝癖つくんですかっ!」


 と楓がとても笑っているので、寝癖も悪くないなとちょっと思ってしまった。


「蓮くん?時間ないこと分かってます?」

「・・・・・・すみません」


 俺がにやけていることがバレたのか楓は少し俺に怒ってきた。


 自分が悪いことは分かっていても、ベッドが心地良過ぎるのが悪いってことに自分の中でしておいた。


「じゃあ、ご飯食べましょうか」

「あっ、まってその前に」


 と言ってた蓮は上の服を脱いだ。デートだから最低限のオシャレはしなくてはと蓮は思っていた。

 しかし楓が、顔を真っ赤にしながら


「なんで、ここで脱ぐんですかっ!」

「えっ?洗面所だし・・・・・・」

「せ、せめて私が出てからにしてくださいっ」


 楓の反応に最初は戸惑ったが、自分の姿を見たらすぐに理解した。


「あ、悪いな」

「先にリビングに行って待ってますからねっ」

「先に食べててもいいぞ」


 洗面所の扉越しに俺がそう言うと楓は少し不機嫌なのか「・・・・・・わかりました」と一言だけだった。

 その様子がいつもと違ったので、不機嫌だと確信した。


 俺がリビングに行くと、楓はもう食べ終わりそうだった。


 着替えをしただけでなく、髪の毛をセットしたり少しだけだが、背伸びをして香水をしたりもしたので遅くなったのだ。


「悪い遅くなって・・・・・・い、いただきます」

「ごちそうさまでした」


 俺が食べようとした時楓の方はご馳走様をしていた。


(これ、絶対さっきのことだよな・・・・・・)


「か、楓?」

「・・・・・・なんですか?」

「夜は・・・・・・一緒に食べるか?」


 そう言うと、楓は自分が持っていた食器をシンクに置いて、また戻ってきた。

 その時の表情は、さっきのような少しピリついた様子はなく口許が緩んでいた。


 そして、そのまま俺の隣にポスッと座ってきた。


「蓮くんがどうしてもって言うんだったら仕方ないですねっ」

「あぁ、どうしても頼む一緒に食べたい」

「ふふっ、わかりましたっ」


 俺は楓の頭を撫でる。とてもさらさらのブロンドの髪の毛がとても気持ちいい。ずっと触っていたいほどだ。


 すると楓は猫が頭を撫でられているとき目を細めるみたいに、楓も目を細めていた。


 頭を撫でている時はとてもニコニコしているのだが、撫でるのをやめた時に表情がしゅんっとなるのがまた可愛い。


 それだから、撫でるのをやめられない。しかしそんな誘惑に負けてしまうと2人とも集合時間に間に合わないので、俺は誘惑には負けなかった。


(帰ってきたら思う存分堪能しよう・・・・・・)


 蓮は帰ってきたら絶対に楓と戯れることを決めていた。


 蓮が朝食を食べ終えたら楓は立ち上がって玄関に向かった。

 俺もシンクに自分が食べたお皿を置いて俺と楓の皿洗いをした。


 いつもは楓がやっているが、正式に付き合った時に料理は任せてるから、皿洗いは俺がやると言った。


「まだ、水は冷たいな・・・・・・」

「ふふっ、お疲れ様ですっ」


 俺がちょっとした愚痴を垂れるとすぐに俺のことを褒めてくる。

 こんな可愛い生き物他にいるだろうか。


「それじゃあ行きましょうかっ」

「あぁ」


 俺は褒められたことに対して少し恥ずかしがりながらも2人で集合場所に向かった。

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