第58話 先輩バカップルの喧嘩

「なぁ蓮、お前らなんか変わった?」

「どうしたんだ急に・・・・・・」


 突然拓人が不思議そうに、俺と楓のことを聞いてくる。

 見た目やそんな話ではないだろう。多分関係のことだ。


「あぁ、まぁ少しな」

「おっ?おっ?!おっ!」

「な、なんだよ・・・・・・」

「遂にやったかー、やっとだなー。長かった・・・・・・本当に長かった。蓮、俺になにか言うことないか?」


 と拓人がニヤつきながら、こちらの顔を覗いてくる。

 俺は隠さないと思った、というよりも別に隠さなくていいと思ったので話すことにした。


「え、えっとその、仮じゃなくてちゃんとお付き合いすることになったから、よろしく」

「まぁ、これからもなにか力になれることがあったらいつでも言ってくれ、初代バカップルとして、として手伝ってやろう」

「はいはい、ありがとな」


 拓人は先輩を強調して言ってくる。先輩風を吹かせたいのだろうか、全然似合っていない。


「あっ!そうだ!」


 拓人は何か思いついたように、勢いよく立ち上がる。


(なんか、また変なこと企んでるんじゃ・・・・・・)


「なぁ、Wデートしようぜ!」

「だ、だぶるでーと?」

「ほら、お前らも、もう付き合ってるわけだし、俺と千夏と楓さんと蓮で」

「俺はともかく、楓にも聞かないといけないだろ」

「大丈夫だと思うけどなぁ・・・・・・」


 そう言って、拓人は楓を俺たちの机のほうに呼んだ。楓はダブルデートの話をを聞くと、嬉しいのか散歩に行けることを知って尻尾をブンブンと振る犬のようだった。


「蓮くんが行くんだったらいいですよ?」


 楓は俺の方をさっきからチラチラと見てくる。


(めっちゃ行きたいアピールをされてるよな・・・)


「俺はいいけど・・・・・・」

「じゃあ、私も行きますっ」

「じゃあ決まりだなっ!」


 「日時はどうする〜」と拓人がいつにするかやどこに行くかを決めている。

 できれば場所は楽しめればどこでもいいが、時間だけは、めちゃくちゃ早い朝などはやめてほしい。


 そんなことを考えていると、楓が呼んだのか千夏がこっちに近寄ってきた。


「あっ、千夏さん、今度ダブルデートするらしいですよ?」

「へ、へ〜。そうなんだ・・・・・・」

「千夏?お前も入ってるんだが」

「あっ!そ、そうだよね・・・・・・」


 あははーと言って、千夏の笑顔は作り笑いのような感じだった。


 そのあと、千夏の目線は拓人にいったが、その時の千夏の目は明らかに拓人に対して不満というよりも怒りといった様子だった。


「かえちゃんと行けるなんて、楽しみだなぁ!」

「拓人とも行けるだろ」

「別にー、拓人なんて知らない」


 千夏は「時間とか決まったら教えてっ」と言ってピリついた様子で自分の席に戻って次の授業の準備をしている。


「おい、何したんだよ」

「いやぁ、実はさ・・・・・・」


 拓人になぜ千夏があんな態度をとっているのかを聞いた。

 ずっと仲良しだったのに、今回だけあんな風なのは絶対に何かがあった証拠だ。


「春休みに花見の予定を立ててだんだけど、俺さぁ千夏との約束忘れてて、友達と遊んでてさ・・・・・・」

「それで、ああなった訳か・・・・・・」

「俺が悪いよ・・・・・・」

「私も、なにか千夏さんから聞けたらお伝えします」


 拓人は蓮たちに頭を下げてきた。それを見て楓が「やめてくださいっ」と慌てていた。


「まぁ、俺も楓とデートできるの楽しみだし、俺の方こそ礼を言うべきかもな」

「蓮・・・・・・お前」

「蓮くんは時々そういうことをサラッと言っちゃうからダメです」

「愛されてるなぁ楓さん」


 俺は自分が言ったことを恥ずかしく感じたのは、拓人や楓が俺に伝えてきた後だった。


 恥ずかしさで、顔が熱くなるが、腕で赤くなっているだろう顔を隠す。


「顔を隠すところも可愛いですっ」

「や、やめてくださいっ」

「一番困るのは俺だよ?2人とも・・・・・・」


 そう言って、拓人が苦笑いしている。そんなこんなで俺たちはWデートすることが決まった。


 そして、拓人と千夏が仲直りできればいいなと、蓮は思っていた。

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