第56話 朝 登校
「や・・・・・・やっぱりしなきゃダメか?」
「はい!当然ですっ!付き合ったのですから尚更しましょうっ」
「わ、わかった」
付き合えてからきちんと手を繋ぐのは、初めてだった。
しかしまだ慣れない。いつも顔が赤くなってしまう気がする。
情けないと思いつつも楓の手をぎゅっと握る。すると小さな手でぎゅっと握り返してくる。
「じゃあ行くか」
「はいっ!」
「早い休みだったなぁ」
「そうですねっ、でも私は学校も楽しいですよ?」
「そうか?いつも普通じゃないか?」
「案外その普通が楽しいって気づいてない人多いですよね」
「まだまだですねっ」と楓は勝ち誇ったような表情を蓮にしてきた。
しかし、なにかと楓は見られることが多いが、今回は俺にも視線が向いている気がする。
するとなぜか楓はムッと頬を膨らませていた。
「どうした?」
「いや、そのっ・・・・・・嫌わないでくださいね?」
「うん?嫌いにはならなけど」
「れ、蓮くんが髪の毛を切ってとってもカッコよくなったので蓮くんの事を気になっちゃう人が出てくるんじゃないかなぁって思って・・・・・・」
「そ、そうか?そんなことないぞ」
俺は楓に「カッコいい」と言われ、恥ずかしさと嬉しさで口許が自然と緩んでしまう。
「蓮くんは自分のカッコよさに気づいてないんです!!」
「えっ、ご、ごめん?」
プリプリと怒っている楓を見て。小動物感がありとても可愛らしかった。
「楓は不安かもしれないけど、俺は多分言い寄られても楓が居るからきちんとお断りするよ」
「れ、蓮くんに不安はしていませんっ。大事にされてると思ってますから」
「大事にしてますっ」
もう、といった感じで顔を逸らす。逸らした時に顔が横になった時、楓の耳が赤いことが気づいた。
「そ、そうじゃなくて、私が勝手にその・・・・・・」
「あっ、もしかして楓ヤキモチ?」
「ち、ちがっ!くない・・・・・・ですっ」
「ははっ、可愛い」
素でその「可愛い」という褒め言葉が出た時、楓が無言でぽかぽか殴ってきた。
それにすら可愛らしさがあるのがずるい。
というか、こういうことをずっとしていたら学校に、着くときには遅刻しているんじゃないかと思った。
「ずるいです蓮くんはそういう事をサラッと」
「別にいいだろ、付き合ってるんだし」
「はい、いいですけど私以外には言っちゃダメですからねっ?」
「わかった?」と言いたいのか、人差し指で俺の唇を塞いできた」
俺は我慢が出来なかった。両腕を楓の背中にまわして、サラサラのブロンドの髪の毛を指で掻き分けて優しく抱きしめる。
抱きしめた瞬間、フワッと甘くていい匂いがして残念ながら柔らかい二つの感触は味わうことは出来なかったのが残念だ。
「ひゃっ?!な、何してるんですかっ!」
「お願い・・・・・・もう少しだけ」
「し、仕方ないですねっ」
そう言って楓も俺の背中に腕をまわして、抱き返してくる。
少しだけ幸福感がハンパなくすごかった。
「い、行きますよっ!蓮くんっ」
「うん」
毎日これじゃ、ちょっと自分の身が持たない事を知った。
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