第54話 ホワイトデー
今日は遂にホワイトデー、いつも楓に感じている恩を今日返す時が来た。
楓は今日バイトが入っており、蓮は店長に頼んで今日はバイトを休ませてもらうことができた。
その間に、千夏に教えてもらったように、クッキーを作るために準備を始める。
緊張はする。しかし、今はワクワクの方が勝っている。
「始めるか・・・・・・」
今日はいつもよりも順調だった。失敗しないでくれと心の中で祈りながら、クッキーを作っていく。
「あとは、これを焼くだけ・・・・・・」
焼くだけだからといって、安心してはならない成功も失敗もまだわからないのだから。
1時間程したあと、電子レンジから取り出すと甘く、いい香りが広がった。
ココア、バター、どちらもいい色をしている。
するとガチャッと玄関が開く音がした。
慌てて玄関に行くと、頬を赤くした楓が立っていた。
外はまだ寒いので、マフラーを外すと、鼻まで赤いのがわかる。
「あれ?早かったね・・・・・・」
「はいっ、店長が今日は、早く帰って大丈夫と言ってくれましたので」
「そ、そうかよかったな・・・・・・」
「はいっ!」
すると、楓が何かに気づいたのか、スンスンとあたりの匂いを嗅いでいる。
だんだんと俺に近づいてくる。
「蓮くんからなんだか甘くていい匂いがします」
「そんな匂いするか?」
「はいっ、します。これでも鼻はいい方です」
自慢げに答えている楓を見て、犬かっ!とツッコミたくなってしまったのは内緒だ。
「なんか、リビングの方からします・・・・・・」
「し、しないと思うぞ?」
「なんでそんなに隠すんですか?」
ジーッと俺の方を見つめてくる。目を逸らすと、「怪しい」と言ってリビングに入っていく。
するとキッチンの方に行き、クッキーを見られてしまった。
「このクッキーはなんですか?」
楓が不思議そうに、クッキーを見つめている。
「楓にあげるクッキーだよ、つまりホワイトデーのお返し・・・・・・」
それを聞くと、あっ!といった表情のあと、照れながらも、ニコニコとしている。
「あ、ありがとうございますっ」
「こ、こちらこそ?」
「食べてみてもいいですか?」
「美味しくできてるかわからないけど、どうぞ」
じゃあ、と言いながら一口もぐもぐと食べているすると楓は瞳をキラキラさせながら
「美味しいですっ!」
「ほ、本当か?」
「はいっ!本当ですっ!」
「よ、よかったぁ」
安心したのか不思議と笑みが溢れた。
「コタツに入りながら食べないか?」
「はいっ、寒いですからね」
そう言って、クッキーをお皿に移しコタツの上に持ってくる。
「今日は、ホワイトデーなのでなんなりとお願い事を申し付けください」
「いやっ!いいですよっ、悪いですし」
「バレンタイン俺もしてもらったし」
蓮は楓にしてもらったので、その分を楓に要求したが、楓はすごく悩んでいた。
断ってくるだろうとは蓮も分かってはいた。
「じゃあ、ぎゅーっと抱きしめてほしいですっ」
「えっ??」
「だ、だめですかっ?」
楓は上目遣いで蓮の方を見てくる。そんな上目遣いをされたら、コタツに入っているからなのか、身体が暑くなってくる。
「いや、いいよ。じゃあ、するぞ?」
「は、はいっ・・・・・・」
ぎゅっと楓を抱きしめる。楓の体を痛くないように力加減を考えながら抱きしめた。
「ふふっ、すごくドクドクって音聞こえますっ」
「し、仕方ないだろ?恥ずかしいし」
「実は私も頼んだのはいいんですが、とても鼓動が早いですっ」
そう言って、軽く抱きしめたあと、二人とも目を見れなかった。
(結果的に・・・・・・大成功なのか?これは)
ホワイトデーのプレゼントが成功してることは楓の表情を見ればわかった。
とてもニコニコしていた。
そのあと、疲れたのか楓は眠ってしまったが、ニコニコとしたまま気持ちよさそうに眠っていた。
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