第52話 お菓子作りの準備

「行ってきますー」

「あれっ?今日もお出かけするんですかっ?」

「あぁ、ちょっとな」

「最近バイトも減らしてますよね?」

「店長に頼んだんだ、やりたいことがあるからシフト減らしてほしいって」


 店長には事情を話したところ、快くOKを出してくれた。

 本当に感謝している。


「やりたいこと・・・?」

「うん、まぁ、色々と」

「・・・・・・・・・怪しい」


 楓はジトーッとした目で蓮の方を見つめる。

 そのあとにクンクンと何故か蓮の服の匂いを嗅いでいる。

 まるで飼い主に出かけて欲しくない犬を見ているようだった。


「だ、大丈夫っ!変なことはしてないからっ」

「そ、そうですかっ・・・・・・」


 楓は少し安心したのか、胸に手を当てて、ふぅっと息を吐いていた。


「じゃあ行ってきます」

「はいっ。いってらっしゃいっ」


 そう言って送り出してもらった。


(ちゃんと美味しいもの作れるようになろう)


 蓮は、深呼吸して、拓人の家に向かう。


 千夏の家ではなく、何故拓人の家なのかというと、もし失敗しても拓人が食べると言ったことと、俺だとしても千夏と2人きりはやはり嫌らしい。


 そりゃそうだ、俺だって楓が拓人と2人でチョコなんて作ってたら・・・・・・

もしかして楓もそうなんじゃないかと、今頃気づいたが、まぁ大丈夫だろう・・・・・・大丈夫ですよね?神様と祈った。


◆◆◆

「おおっーよく来たな」

「お邪魔します」

「千夏はもう準備してるぞー」

「おっけー」


 拓人とそんな会話をして、拓人の家に上がると、千夏がなぜかあわあわしていた。

 なにか焦っているような感じだった。


「何してるんだ?」

「いや、チョコどこやったかなと・・・・・・」

「冷蔵庫の中じゃないのか?」

「あっ、そうだ」


 「えへへ〜ごめんごめんっ」と言って悪戯笑みを蓮に見せてくる。

 それを見た俺別にどうもしなかったのだが、隣にいた拓人がデレデレしていた。


「可愛いっ!少し抜けてるところも可愛いっ!」

「あっそ・・・・・・早くやるぞバカップル」

「お前も人のこと言えないからな、バカップル二代目」

「バカップルじゃないし、カップル仮な?」

「いーや!バカップルだな!大が付くほどな!」

「そんな筈は・・・・・・」


「2人とも!!」


 少し拓人と声が大きくなりながら話していたら、千夏が少し大きな声で、俺たちの会話を遮った。


「早く始めるよ?」

「はい」

「はい」

 

 千夏も今日は俺の味方らしい。まぁ俺も怒られたようなものだが・・・・・・

 今日はちゃんと食べれるところまでにはしたいな・・・・・・












  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る