第三章

第46話 3学期の朝

 実家から帰ってきたのだが、すぐに学校というのも中々、ストレスなものだ、できればもう少し家でゆっくりしたかったのだが、そうもいかないらしい。


 なんせ、今日から楓からの提案で一緒に学校に登校することになったからだ。

 一緒に登校なんてしたら学校の奴らにすぐにバレてしまうだろう。


 しかし、もう仮ではあるが付き合っているのだから、心配ないと思うし、一応楓のあの父親には好きにしろって言われてるし、うちの母さんや父さんは楓と結婚してくれたら、なんて考えてるので、両家りょうけ公認の同居と言っておけば大丈夫だろう。


「蓮くん〜?なにしてるんですかっ?はやく朝ごはん食べてくださいっ」


 遅刻してしまいますよっ、と楓に少し急かされ、洗面所の水をパシャリと顔にかけ、それをタオルで拭き、洗面所を出る。


 すると、パンの焼けたいい匂いが鼻に入ってくる。


(なんか・・・・・・いいな、こういう朝)


 蓮はそう思いながらも、ようやく、カップルになったんだよな・・・・・・そう思い、テーブルに置いてある料理の前に座る。


「もうっ、冬休み明けですからって気を抜いてはいけませんよっ?」

「わかってるつもりだけど居心地が良すぎて学校に行きたくない」

「もうっ、小学生みたいなこと言わないでくださいよっ、さっ朝ごはんたべましょう」


 目の前にあるパンやハム、ウインナーをもぐもぐを食べていく。

 サラダも残さず食べ最後には温かいコーンスープを飲んだあと、制服に着替えて学校に行く。


 ガチャッと玄関を開けるとすぐに冷たい風が蓮達の体を襲う。

 さすが冬と言ったところだろうか、近所の屋根には、いっぱい氷柱つららができている。


 手袋もマフラーもしているのに、とても寒い。


「楓は・・・・・・・・・なんかモコモコしてるな」

「ふぁい!とてもあったかいですよ〜」


 そう言って、俺に抱きついてくる。もちろん蓮も上着を着ているので、楓の言う暖かさは感じられないが、心はとても暖かくなった。


「なにしてるんだっ!?」

「ご、ごめんなさいっ!あったかいということを伝えようと思いまして・・・・・・」


 楓は恥ずかしくなったのか、マフラーの中に顔を隠してしまった。

 そのあと、少し気まずい空気になり、沈黙ちんもくした。


「そ、そろそろ行かないと遅刻するから行こうか」

「は、はいっ!そうですね」


 寒い学校までの道のりを歩いていく。まだ家の近くは同じ学校に通う生徒が少ないので、助かるが、いない訳ではないので早速バレている。


 しかも、楓の方ばっかり見て、がっかりや驚いている奴らが大半でそのあとに、俺に殺意さついのこもった眼差しを向けてくる。


「あ、あのっ、手繋ぎませんか?ほ、ほ、ほらっ寒いですし!・・・・・・ダメですかっ?」


 手袋してるけど、というツッコミはせず、同じ学校の奴らに見せつけるように、そっと隣にいる彼女の手を握った。


 最後の方にシュンとされちゃ、断れる男なんていないと思うし、断る気もない。


 すると、楓の手をギュッと握ると、楓もギュッと強く握り返してきた。


 楓の方を見ると耳まで赤くしていた。寒さなのか恥ずかしくてなのか、わからないが、寒さのせいにしておくことにした。


 そのあと学校の近くまで行くと、登校する生徒が多いがほとんどの生徒がこちらを見ながら登校していた。


(あー、これは絶対噂うわさ流されるし、男共には問い詰められるなぁ)


 はぁっーとため息をつくと、楓が、手をギュッとしてくるので、楓の方を見ると


「朝からため息してると、幸せ逃げますよっ?」

「今幸せなんだけど・・・・・・」

「そ、それは・・・・・・私もですっ」


 「なんでしょうこの会話」と言いながら、ニッコリ恥ずかしそうに微笑んでくる彼女を見て、噂されることなんて、小さいことだなと思えた。

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