第29話 気まずい次の日
「お、おはよう」
蓮は
しかし、いつもとは違い、ぎこちなかった。
「お、おはようございましゅっ」
それは楓も一緒だったらしく、ソファに横になり顔をうずめていたらしい。
とにかく、もっと自分の発言には気をつけようと思った。
「あ、朝ごはん・・・・・・食べますか?」
「あぁ、頼もうかな」
楓は「はいっ」と言って、やはりまだ目を合わせずにスタスタとキッチンの方に行く。
(まぁ、目が合ったら合ったで、恥ずかしいんだけど・・・・・・)
そんな事を思いながらも楓の朝ごはんを待つ。
「できましたっ」
そう言ってお皿をテーブルに置いてくれる。
ご飯にベーコン、スクランブルエッグ、味噌汁、牛乳と、これぞ朝ごはんといった感じだった。
「ありがとう」
楓に一言お礼を言って、ベーコンとご飯を一緒に口に運ぶ。
次にケチャップをつけたスクランブルエッグを口に運ぶ。ケチャップをつければなんでも美味しくなるのではないかと蓮は思っていた。
しかし、美味しさの理由はそれだけではないと思う。やはり誰かと一緒に食べるというのは、美味しい料理をもっと美味しくしてくれるのだと思う。
それが自分が好意を寄せている女性であればなおさら。
「ごちそうさまでした」
「ふふっ、本当に美味しそうに食べてくれますねっ」
「前にも言ったけど、楓の料理は美味しいよ」
そう言うと楓は頬を赤くして、もじもじしている。
「最近、素直に褒める様になりましたよね早坂君」
「前も素直だったろ」
「素直じゃないですよっ!私がカッコいいって言っても・・・・・・・・・」
楓も勢いで言っていた部分もあって、冷静になった瞬間、顔がどんどん赤くなる。
それを聞いていた蓮はとっくに顔に熱が集中していた。
手で顔を
「ごめんなさいっ・・・・・・」
「なんで謝るんだ」
「だって・・・・・・その・・・・・・はい」
なんなんだ、と思いながらも二人は顔を赤くしたまま時が過ぎる。
すると手元にあったスマホがブッブと鳴る。
一体誰からだ?と思い、スマホを開いた。メールは母からだった。
冬休みには帰って来いという内容のメールだった。
帰りたいのは山々なのだが、問題は楓をどうするかなのだ。
楓に一人で
いっそのこと二人で実家に・・・・・・それはなんか彼女を紹介するみたいで恥ずかしい。
とりあえず、楓に聞いてみることにした。
「楓ちょっといいか?」
「はい、なんでしょう?」
「あのさ、冬休みに俺は実家に帰らなくちゃいけなくなった」
「・・・・・・え?」
明らかにそれを聞いた時、楓の表情が暗くなった。しかしすぐに笑顔を作り蓮に見せてくる。
「大丈夫ですよっ?留守番は任せてくださいっ!」
と言っていたが、やはり蓮は心配だった。さっきの表情を見てしまったというのもある。
しかし、小学生のような、好きな子に
「あー、そっか本当は一緒に行こうとしてたけど、一人で留守番できるんだったら、心配は要らないかじゃあ、一人で行く」
「えっ?!・・・・・・べ、別にいいですよっ!」
本当に大丈夫なのか、それとも強がっているだけなのか、答えは一目瞭然だった。
「嘘だよ、楓がいいなら一緒に行くか?」
「・・・・・・・・・はいっ」
その素直さが、なんとも可愛いらしく、「ふっ」と少し笑ってしまった。
するとそれに反応した楓が頬を膨らませて
「バカにしてますか〜っ?」
「してないよ、可愛いなって思っただけ」
「可愛いって・・・・・・・・・早坂君はいじわるですっ」
「昨日は優しいって言ってなかった?」
「今日は優しくないですっ」
ごめんごめんと謝ったが、楓はツーンとそっぽ向いている。
母には連絡しないとなぁと思いながらも、どんな説明をすれば許してもらえるだろうかと今から必死に考えていた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます