第23話 クリスマス仕様

 クリスマスも近づいてきて、街はすっかりクリスマスムードだ。

 イルミネーションやケーキの看板、サンタの服を着てビラ配りをしている人もいる。


 そして、そのクリスマスムードは蓮達のバイト先もクリスマス仕様になっていた。


 外見にはクリスマスツリーくらいしか置いてないのだが、店員の服装が、いつもの服装ではなく、女性はサンタの帽子や服を着ている。


 男性はトナカイの角のカチューシャだけをしている。何故こんなにも男性と女性で違いがあるのかというと店長曰く男性のトナカイ姿など需要があまりないらしい。



 蓮はあまりはずかしい格好をしなくて良かったとホッとしていた。

 しかし、楓はもちろん女性なので、サンタの姿をしながら今日もせっせと働いている。


「さっき、お客さんから可愛いと言われましたっ、この姿は、恥ずかしいのですけど、可愛いのでしょうか?」


 と疑問に思っているのだろうか、楓は首を傾げながら聞いてきた。


「可愛いと思うぞ?」

「そうですか・・・・・・」

「なんかあったのか?」

「いっ、いえっ!その・・・・・・結構見られるなぁと思いまして・・・・・」


 そりゃあそうだろ、言ってしまえばもうこのお店の看板娘が、サンタのコスプレをして、仕事をしているのだ、それ目当てで来る客も、ちらほら居る。


「まぁ、本当に可愛いから仕方ないな、それよりもう休憩だろ?しっかり休んでこいよ」

「あ、はいっ分かりました・・・・・・」


 楓はそう言うと、頬を赤くして、すたすたと休憩室に向かっていた。


 何故か顔が赤かったなと思い、熱でもあるのだろうかと心配だった。


「蓮ちゃーん、休憩よー」


 楓が休憩して、5分後くらいに蓮も休憩時間になった。

 蓮と楓の休憩時間が近いのはいつも偶然らしい。


「あっ、早坂君休憩ですか?」

「あぁ、うん」

「じゃあお話でもしませんか?」


 と楓が少し嬉しそうに聞いてくるので、思わず笑ってしまった。

 普通に可愛いと思ったのだ。楓にそんなことを言われなくても、蓮は休憩に入る前から楓とは喋るものだと思っていたからだ。


「なっ、なんで笑うんですかっ!」

「いや、可愛いなって思って、だってそんなこと言われなくても、いつも喋ってるし」


 それを言うと楓は顔を赤らめながら、こちらを、ムッーと見てくる。

 その視線に蓮は分かっていながらも、気づいてないフリをしてコーヒーを一口飲む。


「このパンケーキ私が作ったんですっ」


 どうぞ、と言わんばかりにパンケーキをテーブルの上に出してくる。

 いいのか?と目線で楓に訴えると、楓はにっこり笑っていたので食べても問題はないだろう。


 パクッと一口食べると、ふわふわの食感に蜂蜜はちみつ、そしてバターの濃厚さが一気に口の中を駆け巡った。


 これはクリスマス限定のパンケーキなのだが、他の人が作るパンケーキよりも美味しかった。


 なんなら店長よりも美味しかった。


「うまっ、すげぇ美味い」

「ほんとですかっ?!」

「うん、マジで店長より美味しい」


 嬉しいのかそれを聞いて楓は頬を赤らめながらもえへへ〜という照れ笑顔のようなのを蓮に見せてきた。


 こんな笑顔を見てしまうと、やはり注目は浴びてしまうだろう。


「おい、楓そういう笑顔あんまり外で見せるなよ?」


「へっ?」

「そういう笑顔を見せると、男は大体楓に注目するから、余計に見られるぞ?」


 そう言って忠告のようなことを楓に言うと、楓は先程よりも、さらに顔を赤くして。


「別に・・・・・・には見せませんよ」


 と、ボソッと言ってきた。しかし、休憩室には今楓と蓮の二人しかいないので、いつもは聞こえないような小さな声でも、二人しかいないので今回は、はっきりと聞こえた。


 蓮はそれを聞いて、顔がすぐに熱くなった。


「あっ、そろそろ休憩終わりですっ、行ってきますね!」


 あと今日も一緒に帰りましょうねとつぶやいていたが、そんなことはいつものことなので気にならない。


 しかし、さっきの蓮にしか見せない笑顔というのが頭に残っていて、思い出すたびに、口許くちもとが緩むのと、顔が熱くなる。


(もうすぐクリスマスなんだけどなぁ・・・・・・)


 12月で、気温も下がって寒くなっているのに対して、蓮の顔は休憩室で暖房だんぼうと共にあつくなる一方だった。


 

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