第22話 二人の先輩
楓がバイト先で仕事を始めて、3日程経った。まだ、それしか経っていないのに、楓の仕事っぷりはほとんど、蓮と変わらないほどになっていた。
「だいぶ慣れてきたな」
「はいっ!これも早坂君が
「いや、楓が頑張ったからだよ」
「そ、そうですか?そう言われると照れますね・・・」
そんなことをカウンターで話していると、カウンター席に座っているおじさんが、微笑んでこちらを見ている。
それに気づいた二人は一気に顔が赤くなる。
失敗した・・・・・・と思いながら、休憩室に入ろうとした時、何かが急に抱きついてきた。その時、背中になにか柔らかいものが当たる。
「後輩ー!おつかれー!」
「
「邪魔とはなんだ!それに、当ててるんだよ?」
当ててるんだよ、とかいう
まぁ、巨乳だ、本人も大きい事は理解しているらしい。
顔も綺麗なのだが、胸のインパクトが強すぎて目線が女性でも下がっているのを見たことがある。
「あれぇ〜?そっちが新人ちゃん?」
「初めましてっ!楓って言いますっ」
「よろしく〜」
「この先輩変だから関わる時は気をつけて」
「変とはなんだっ!」
うりうりと大きな胸を押し付けられ、だんだんとめんどくさくなってくる。
「早く仕事行ってください」
「あっ、そうだった!」
そう言って、パタパタと慌てて仕事に向かって行く。
休憩室に入ると、もう一人の先輩が休憩している途中だった。
「あれっ?その子可愛いね、蓮の彼女?」
「違います」
この人は
見た目はチャラそうなのだが、たまに
「そんなすぐ否定しなくても・・・・・・」
「何か言ったか?楓」
楓を見ると、不服そうにしていたので、理由を聞くと、「言いませんっ」と言ってプイッとそっぽ向いてしまった。
「まぁ、立ってないで座りなよ」
「そうします」
二人で休憩室に入って、コーヒーなどを飲んで休憩していると、奥の方からドタドタと騒がしい音が聞こえてくる。
ガチャッと思い切り休憩室の扉を陽菜先輩が勢いよく開けてきた。
「ちょっと誰かヘルプッ!すごく人増えてきた!」
そう言ってくるが、いきなりのことで誰も反応をしなかったところ、陽菜先輩は目をウルウルさせながら扉を閉めた。
すると、成瀬先輩が、こちらをジッと見ていた。
「なんすか」
「いーや?別に?」
楓を見ると、やはり疲れているのか苦笑いを浮かべるだけ、しょうがないと思い、重い腰を持ち上げた。
「先輩今度なにか奢ってくださいよ」
「えっ?なんで・・・・・・って行っちゃった」
扉を閉めて、陽菜先輩のヘルプに向かう。
「でさ、楓ちゃん、蓮と付き合ってるの?」
「へっ?!いや、付き合ってはないです」
「じゃあ、好きなの?」
「えっと・・・・・・それはその」
こくこくと、頭を縦に振る楓、それを見て、成瀬はニヤリとしていた。
「俺実は今彼女募集中でさ〜俺だったらめっちゃ楽しい事とか知ってるし、お買い得だと思うんだけどどう?」
「えっと・・・・・・成瀬さんにはもっといい女性というか、好きな人いるのに冗談やめてくださいっ」
それを聞いた成瀬はポカンと口を開けていた。
「陽菜先輩のこと好きですよね?さっき来た時にずっと見てました」
「ちっ、違うっ!あれはただ単に乳がでかいから見てた、だけで!」
「ふふっ、可愛いですね先輩」
それを聞いて、腹が立ったのか楓に近づく成瀬、楓の頭を触ろうと腕を伸ばした。
「成瀬先輩、後輩になにしてるんですか」
「なる〜?いじめちゃだめだぞ?」
「陽菜先輩もですから」
ツッコミを入れると陽菜先輩は「えぇっー」と少しだけショックを受けていた。
「陽菜お前仕事は?」
「なるを呼びに来たの、後輩君は休憩したばっかりだったらしくて・・・・・・ね?お願い!」
「ったく仕方ねぇな」
そう言って、少し照れながらも陽菜先輩のヘルプに行った成瀬先輩はとても嬉しそうだった。
「ふふっ、やっぱり先輩好きじゃないですか」
「なんの話だ?」
「教えませーん」
まだ怒っているのかと思って、頭を下げると、楓は困惑していた。
「そういえば成瀬先輩となに話してたんだ?」
「えっと・・・・・・先輩の好きな人?」
「ふーん、あの人いっぱい候補いるからなぁ」
「そうですか?私には一人の女性を追っているようにしか見えませんでした」
楓の言葉には謎の説得力があった。なにか自信があるのだろうか、蓮は反論はしなかった。
「そういえば、早坂君は陽菜先輩と仲いいですよね?」
「そうか?俺はいいように
「店長・・・・・・ですか?」
「あぁ、この前も」
店長が、転びそうになった陽菜先輩を受け止めた時の話をした。
受け止められた陽菜先輩は俺などにする。悪戯な笑みではなく、とてつもなく
しかも店長以外には胸などを押し付けてくるのに対して、前に一度店長にはしないのかと聞いたところ
「そんなはしたない事出来るわけないでしょ!?」
と店長だけ
そのことを楓に伝えると、少し暗い顔をしていた。
「どうした?」
「いえっ、その
「なにが?」
「蓮君は知らなくていいですっ!」
「なんだそれ」
と教えてくれない楓に対して、子供のように少し口を尖らせそっぽ向く。
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