第20話 天使様の面接

 楓がバイトをしたいと言っていたが、バイト先までは教えてくれなかった。

 今日は休日で、結構人が入っている。ここまで忙しいと流石に、疲労が溜まってくる。


 しかし、今日は午前中だけのシフトなので、あと二時間程頑張れば、家に帰れる、それだけを心の支えに頑張っていた。


 その時、1人の女性がお店に来た。ブロンドの髪で綺麗な肌だが、帽子とマスクをしていたので、顔まではよく見えなかった。


(ま・・・・・・そんなわけないよな)


 一瞬楓かと思ってしまったが、そんなことはないだろうと、気にしないようにはしていたのだが、やはり気になってしまうのは男の性なのだろうか。


 しかし、その女性はなにやら、店員に連れられ、バックヤードに連れてかれる。


 バイトの面接か?と思い、確かにバイトではあるが、蓮自身もかなり大変と思っていたところだった。


「蓮ちゃーん、ちょっと来てくれない?」


 店長から俺を呼ぶ声が聞こえ、俺もバックヤードに向かう。

 店がだんだん混んできてるのに、こんな時に、なんで・・・・・・と思いながら面接の部屋に店長が手で来いという仕草をするので、面接の部屋に行くと。


 先程店員に連れられバックヤードに来た、ブロンドの髪の毛の人が座っていた。


「あのー店長?これは一体・・・・・・」

「あの子、面接に来たんだけど、今日から入れるらしくて、でも教育係がいなくて・・・・・・」

「もしかして・・・・・・嫌ですよ?」


 俺は嫌な予感がしたので、早めに否定しておくと、店長は本当に困った顔をしていた。


「でも、この子、蓮ちゃんが知り合いだって」


 知り合い?この金髪が?俺の知り合いで金髪なんて一人しかいないのだが


「もしかして、楓か?」

「は、はいっ、すみません・・・・・・」


 そう言うと、帽子とマスクを取って、いつもの家で見る、楓が自分のバイト先の面接に来ていた。


 自分のバイト先に知り合いがいるのは、たしかに心強いが、俺が教えられることはあまりないような気がする。


「分かりました店長、俺が教えます」

「やだっ、本当?、ありがとう〜ね」


 そのあと、楓を見ると、申し訳なさそうにしていたので、俺が仕方ないなという表情をすると、少し楓の表情がやわらいだ。


「それで?面接の結果は・・・・・・」

当然採用さいように決まってるでしょ?こんなに可愛くて礼儀正しくていい子なんて、この日本を探してどれだけいるか・・・・・・」


 そこまで言うか?とは思ったが、たしかに礼儀正しくて、可愛い子は見たことがない。


 (店長も楓の過去を聞いたら驚くだろうな)


 そんなことを考えていた。しかし、一緒に仕事ができるからなのか、分からないが、何故か口許くちもとが緩んでしまう。


「今日から入れるらしいからよろしくねん」

「はいはい」


「あのっ!早坂君・・・・よろしくお願いしますねっ」


 てへっ、といった表情で舌を少し出してくる楓は悪戯いたずらに成功した子供、いつも学校で天使様と言われているが、その真逆で、小悪魔を想像させた。


 しかし、こんな表情も俺だけが見れるのかと思うと、クラスの男子達には少し自慢したくなる。


「ここが女子の更衣室、多分制服貰ってると思うから、ここで着替えてきて」


「あのっ!待っててくれますか?」

「3分は待つそれ以上は待たん」

「はいっ!着替えてきますねっ」


 そう言って、敬礼のようなポーズをして、スタスタと更衣室に入っていく。

 楓が中で着替えているという想像と、ウチの店の制服を着ている姿を想像してしまう。


 そんな想像を、している自分が恥ずかしくなり、壁に頭を軽く打ち、冷静を保とうとする。


(はぁ・・・・・・似合うんだろうな)


 やはり、家では味わえない新鮮しんせんさがあるというか、なんというか、表現するのが難しい感情だった。


 そんなことを考えていても、顔は熱くなる一方で、熱があるのではないかと、自分でも疑うほど顔が熱かった。


「これからのバイト、どうなるんだよ」


 俺は壁に向かって喋りかけた。

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